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吉本興業と国連が連携、なぜ?国連広報センター・根本かおる所長に聞く

世の中が平和でないとお笑いは受け入れられない
吉本興業と国連が連携、なぜ?国連広報センター・根本かおる所長に聞く

根本かおる所長

**「SDGs」一段の浸透へ
―日本企業のSDGsへの関心は。

「ここ数カ月で浸透してきたと感じている。(政府が描く超スマート社会)ソサエティー5・0もSDGsにつながる。経団連も行動指針に採り入れようとしている。日本証券業協会も証券会社役員に“SDGsバッジ”着用を呼びかけた」

―国連広報センターの活動は。

「日本は市民の関心が低い。『国連』『開発目標』というと、敷居が高くなる。SDGsを身近に感じてほしいと、吉本興業の大崎洋社長に協力を直訴した。すると共感してもらえた」

―吉本とSDGsとが結びつきにくいのですが。

「吉本はイベントでSDGsの短編アニメを上映したり、芸人がネタを競う“SDGs―1グランプリ”を開いたりしている。世の中が平和でないとお笑いは受け入れられず、吉本の事業が成り立たない。だから、お笑いを通してSDGsを広め、良い社会を作ろうとしている。日常業務で取り組めば、無理のない形で目標達成に貢献できる」

―国連は地域単位の活動、官民の連携も求めています。中小企業の取り組みはいかがですか。

「“三方よし”は、SDGsと親和性がある。中小企業も三方よしを意識しており、SDGsを理解している経営者も多い。SDGsは世界共通言語。地域社会も国際舞台と直接つながり、世界と成功事例を共有する機会を持てる」

―東京五輪・パラリンピックもSDGsがキーワードです。

「20年は正面からSDGsに向き合う五輪となる。持続可能な調達を掲げ、社会に配慮した木材を使ったり、メダルを都市鉱山から作ったりする。市民から繰り返し使えるリユースカップの使用が提案された。東京五輪を社会制度変革のレガシーとし、世界に発信したい」

【記者の目/長期目標描くツールに】
16年は自社の事業をSDGsに当てはめ、貢献分野を示す企業が出てきた。17年は分野を絞り、具体的なストーリーで貢献を語る企業が増えたと感じている。「30年の社会から逆算し、いつまでに何をする」(根本所長)といった長期目標を描くツールとして、SDGsを活用する企業が増えてほしい。(編集委員・松木喬)

【用語】SDGs=2030年のあるべき姿を目標として描いた。飢餓、教育、資源、災害対策など17分野の目標がある。達成すると12兆ドルの経済価値が見込まれる。
日刊工業新聞2017年10月16日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
SDGs(エス・ディ・ジーズ)。少しずつ聞かれるようになってきました。企業の発行物、経営説明会にアイコンが登場するようになりました。2年前に紙面で特集した時は、CSR担当者しか知らない状況だったとのは大きな差です。吉本興業もSDGsに取り組んでいます。SDGsー1グランプリ、みてみたいです。

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