コピー機屋さんの地方創生はひと味違う

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福井県坂井市のプロモーションイベントでは企画から運営まで担当し、VR体験メガネなどを用いた楽しめるイベントにした
 複写機メーカーが自治体と相次ぎ提携し、地方創生の取り組みを拡大している。全国津々浦々にコピー機を売る企業にとって、地域の活力は国内ビジネスに直結する。キャラクターの違うリコーと富士ゼロックスが、それぞれ奮闘している。

リコー 地元の“何でも屋”


 リコーの特徴は、何でもやってみよう精神だ。地方創生の取り組みを支えるのは、社員の“地元”への思い。活動中心となる販売子会社のリコージャパン(東京都港区)各支社の社員は地元出身者が多く、地元に役立つ仕事は社員のモチベーションを高められる。

 一見、複写機と地方創生は全く違うビジネスに思えるが、リコージャパン新規事業本部社会インフラ事業部長の松坂善明執行役員は、「これまでの仕事と大きな違いはない」と話す。

 というのも、以前から顧客の求めに応じ、複写機と一緒にパソコンなどさまざまな商品を売ってきた。要望に合わせて何でもやってみる姿勢は地方創生でも同じだ。

 同社は各支社長の重要な仕事として地方創生を位置付ける。支社長がリードすれば、利益が出にくい時も続けやすい。そして、社会インフラ事業部傘下の社会イノベーション部がリコーの保有技術や各地域の事例を紹介し、各支社をサポートする。

 ある地域では、子育て中のリコージャパンの女性従業員に意見を聞き、ショッピングモールの空き店舗を活用した子育て支援センターを開設した。役所に行く時などに、駅近くで子どもを預けられるため、利便性が高い。大学に運営を委託し、学生の教育にも役立っている。

 福井県坂井市からは、「観光プロモーションイベントに従来なかった手法を取り入れたい」と相談があった。そこで、仮想現実(VR)体験メガネを使った天守閣の疑似体験や、子どもが描いたイラストをディスプレーに映して動かすなどの技術を紹介し、全体の企画からイベント運営までを担当した。

 このほか「国民体育大会をバックアップしてほしい」や「駐車場を立体にしたい」という相談まで寄せられた。「何でも相談してほしい。よろず相談所になっていきたい」(大塚哲雄社会イノベーション部長)と話す。

 リコーだけで応えられない要望には、観光会社や金融、大学、地元の中小企業と連携する。また、逆に以前に連携した会社から、別の地方創生の依頼を受けることもある。松坂執行役員は、「今これだけで飯が食えてるかというと首をかしげるが、『数年後は良さそう』と感じられる。みんなが笑顔になる事業はいい」と話す。

富士ゼロックス 本業はコミュニケーション


 一方、富士ゼロックスは研究者肌。自社の本業をコミュニケーションと位置づけ、地元の人の気持ちを引き出す「対話会」に長年のコミュニケーション研究の成果を惜しまず注いでいる。

 SWIソリューション&サービス営業部地域創生営業部みらい創り支援グループの高下徳広グループ長は、「最初に思いつく地域の課題は、外部からすり込まれたものが多い」と指摘する。例えば、「観光客を増やすには英語の看板が必要」や「スターバックスコーヒーの店舗が必要」など、効いたことのある話だ。
対話会が行われた「ふれあいとーふや。」

 しかし、経験上、「地元の人の『思い』の乗ったアイデアでなければ、本当の地方創生にならない」(みらい創り支援グループの柳原公揮氏)という。地方創生は、行政やさまざまな考えを持つ住民たち、地域企業などと連携するため、かなりのエネルギーがいる。借り物のアイデアでは、ガス欠になって最後までたどり着かない。

 対話会でいろんな人が集まれば、声の大きな人に引っぱれたりもする。これを避けるにはどうしたらいいか。コミュニケーションの工夫は、1月下旬、静岡県松崎町の元豆腐店を活用した共用オフィス「ふれあいとーふや。」で開いた観光をテーマにした対話会で見ることができた。

 まずは全員で大きな円を作って座り、一言で自己紹介。次に1人で観光客が長期滞在した時の具体的な思い出を考え、2人組になって7分ずつその話をする。相手の話は、質問せずに黙って聞く。今度は6人グループになり、2人組の時に聞いた相手の話をかみ砕いて他の4人に説明する。
観光をテーマに本音を語り合い、アイデアを練った

 次は話したことのない人同士で4人グループになり、10泊11日の観光のアイデアをメモに書き、大きな模造紙に貼る。一定時間話したら、4人のうち1人を残して別のグループのメンバーと入れ替え、新しい意見を入れてアイデアを練る。聞き手に徹する時間や相手の話の紹介、メンバーの入れ替えなど、一つひとつがノウハウだ。

 質問も工夫する。別の地域の対話会では、どんな地域にしたいかを引き出すために、「輝いている思い出は?」と質問した。

 すると、「田んぼのあぜ道を登下校している時に、おばあちゃんが『がんばってるね』と応援してくれてうれしかった」との答えがあった。本当に残したい地域の良さが浮かび上がる。

 高下グループ長は、「良い経験と今を比較して、導き出されたアイデアは自走しやすい」と自信をのぞかせる。

 高柳聡彦地域創生営業部長は、「しっかり地域とつながることが長い目で見て大事だ」と話す。異業種とも積極的に連携し、コミュニケーションから生まれたアイデアの実現に取り組む。
(文・梶原洵子)

日刊工業新聞社2018年4月23日

COMMENT

梶原洵子
編集局第二産業部
記者

建設のような専門性を生かした地方創生に対し、複写機メーカーは人や情報をつないで何でもやるスタンスです。IT大手に比べ小回りが効くのもメリット。複写機は構造改革やリストラが続いています。地方創生の利幅は薄いかもしれませんが、続けていってほしいです。

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