エンジンの熱効率でトヨタが考えていることを説明しよう

岸宏尚常務役員に聞く「2025年頃には実験室で50%にしたい」

 ―新設計思想「TNGA」を適用したエンジンの展開を2017年からはじめました。
 「第1弾で排気量2500cc、第2弾で同2000ccを投入しているが、内燃機関やパワートレーンの考え方は省エネルギー、燃料多様化への対応、そして一番大事なエコカーは普及してこそ社会に貢献するという思いがある。新しい加工法のレーザークラッドバルブシート工法などで燃焼をもう一段進化させて、高速燃焼によって内燃機関の素(す)のポテンシャルを上げた」

 ―熱効率はガソリン車用で40%、ハイブリッド車(HV)用で41%とそれぞれ世界トップレベルです。
 「特徴は、ハイブリッドシステムと組み合わせることも考慮してできるだけシンプルに仕立てていること。HV用は最高熱効率のほか、圧縮比もおそらく業界最高水準の14にしている。ガソリン車用と生産ラインを共通化でき、生産性や開発効率を高めることも同時に成し遂げた」

 ―ある意味、制約がある中でエンジン単体の性能を最高水準に高めたのですね。
 「20―30種類の改良を採用した。レーザークラッド工法は、バルブをまっすぐにするためバルブシートにレーザーで合金を溶融し、抵抗感なくたくさんの空気を燃焼室に送り込むため高速燃焼につながる。これからのエンジンの進化は圧縮比を高め、リーンバーンという薄い混合気をどれだけ上手に燃やせるかがベースとなる。それと、排気や冷却水などに捨てているエネルギーの低減と回収する技術がセット。遮熱コート剤を使い、熱を逃がさないことにも取り組む」

 ―熱効率の今後のターゲットは。
 「実験室レベルでは現在でも約45%は出ており、25年頃には実験室で50%にしたい。だが、これまで約100年かかって40%超まできたので、ここからの10%向上は難しい。実用化にはもっと研究を積み重ね、生産性や搭載性、排ガスの処理などを乗り越えないといけない」

 ―研究すべき対象が多岐にわたります。
 「燃料を改良・改質する共同研究も一部の石油会社と進めている。成分レベルまで研究し、例えばノッキング(異常燃焼)を支配している成分を見極める。ノッキングを抑える成分はあるほうが良いが、誘発する成分は抑制するという観点。燃料を変えるため、ハードルが多くコストもかかる。まず基礎研究からはじめて、実用技術に持ち込むことも考えていく」
「実用化にはもっと研究を」と岸さん

(聞き手=名古屋・今村博之)

日刊工業新聞2018年4月20日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
04月20日
この記事のファシリテーター

トヨタのすごみは、エコカーの時代を築いたHVとの組み合わせを想定しながらエンジン単体の性能でトップレベルに到達していることだ。世界各地で強化される環境規制は複雑で「連立方程式を解くよう」(岸常務役員)という。エンジンの競争力強化は規制クリアのためのシステム構成上、大きなメリットとなる。
(日刊工業新聞名古屋支社・今村博之)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。