米でロケットビジネス加速、日本も負けるわけにはいかない

JAXAや国内のベンチャーも虎視眈々

 使い勝手のいい小型人工衛星の打ち上げ需要が高まる中、衛星を宇宙に運ぶ小型ロケットの開発競争が勢いづいている。米国では民間企業がロケット打ち上げビジネスに続々と参入しており、従来の打ち上げ費用を大幅に抑えることに成功している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国内のベンチャーもこうした小型・低価格化の流れに乗り遅れないよう開発を進めている。

 JAXAの奥村直樹理事長は超小型衛星について、「外交分野や人材育成で重要な役割を果たしている。将来の宇宙産業の中核になる」と期待する。

 地球観測画像の販売といったビジネス用途では、小型衛星よりさらに小さい100キログラム以下の超小型衛星の需要も広がっている。

 現在、超小型衛星を宇宙に運ぶためには、大型ロケットに載せる大型の主衛星に“相乗り”するのが主流だ。だが低価格の小型ロケットが開発できれば、今までのように主衛星の打ち上げスケジュールに引っ張られることなく、投入したい軌道に好きなタイミングで打ち上げられる。衛星を打ち上げる顧客のニーズに細かく対応することができる。

 宇宙ベンチャーの米ロケットラボは1月、ニュージーランドの発射場から超小型衛星を載せた全長17メートルの小型ロケットを打ち上げ、衛星の軌道投入に成功した。超小型衛星を載せた小型ロケットの打ち上げとしては世界初の成果だ。

 こうした動きに日本も負けていない。

 JAXAは3日、民生技術を用いる長さ9・54メートルの電柱型小型ロケット「SS―520」5号機を打ち上げ、超小型衛星を軌道に投入することに成功した。

 2017年1月の同4号機の打ち上げに失敗してから1年。「ロケットの打ち上げ成功だけを考えて取り組んできた」(羽生宏人プロジェクトマネージャ)思いが通じ、人工衛星を載せたロケットとして世界最小レベルとなる打ち上げ成功につながった。

 このプロジェクト自体は3キログラム程度の超小型衛星の打ち上げ実証が目的。高度180キロ―1500キロメートルの軌道を周回する。

 打ち上げ費用は約5億円。開発にはキヤノン電子が携わった。実証実験で得られた知見は民間による低価格ロケットの開発につながるだろう。

 日本の民間企業も動きだしている。ロケット開発ベンチャーのインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は18年春にも、長さ10メートルの観測ロケット「MOMO」(モモ)2号機を北海道から打ち上げる。高度100キロメートルへ打ち上げ、4分間の微小重力環境を実現する。今回は高知工科大学の超低周波音計測器を載せ、大気上層部での音響を計測する。

 同社は17年7月に初号機を打ち上げたが、目標高度に届かず失敗。今回は打ち上げ可能なぎりぎりの重量を保ちつつ機体強度を向上するなどの改良を施した。

 創業者の堀江貴文取締役は「考えられるだけのことはやった。あとは首を長くして待つしかない」とあせる気持ちを抑える。打ち上げの成功で3号機以降のロケット量産化に弾みをつけたい考えだ。
打ち上げに成功した「SS−520」5号機(JAXA提供)

(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2018年2月13日

日刊工業新聞 記者

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02月15日
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低価格のロケット開発が進めば、インターネットが普及したように宇宙利用のハードルがぐっと下がり、新たなビジネスが続々と生まれるかもしれない。
(日刊工業新聞科学技術部・冨井哲雄)

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