「みちびき」を日本上空でわざとノロノロできるのはなぜ?

ケプラー「面積速度一定」の法則を利用

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みちびき2号機のイメージ(準天頂衛星システムウェブサイトより)
 17世紀ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーは天体を精密に観測し、惑星の運動に関する三つの法則を発見した。今も地球上空に人工衛星を飛ばすための基本だ。

 そのケプラーの第2法則が「面積速度一定」。楕円(だえん)軌道上の惑星や衛星が、一定の時間で移動した距離を軌道面の面積で見ると、常に同じになる。つまり中心近くを移動するときは速いスピードで、逆に遠くではゆっくり動く。

1日、打ち上げに成功した準天頂衛星「みちびき」2号機は、この法則を利用している。日本上空で遠地点を通るように軌道を設定し、わざとノロノロ通過させる。準天頂にいる時間が長いため、地上で電波が受信しやすい。誤差数センチメートルの高精度測位は、さまざまな産業の裾野を広げると期待される。

 ケプラーが「みちびき」のような衛星軌道の利用方法を予想していたかどうは分からない。だが一見、何の役に立つか分からない天文学の研究の積み重ねが、こうして花開いたことに面白みを感じる。

 科学技術は常に、すぐに役立つ応用分野を重視するのか、それとも基礎分野に光を当てるべきかが議論される。衛星打ち上げのようなイベントの時に、人類の叡知(えいち)のあり方を考え直すことも大いに意味があるだろう。

日刊工業新聞2017年6月2日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

 みちびき2―4号機は、10年に打ち上げた初号機よりも3年長い15年以上の設計寿命となる。2号機は重さ4トン、高さ約6・2メートルで、軌道上展開後の全長は約19メートルとなる。1機あたりの開発・整備費は300億円。現行では、みちびきの初号機とGPSを組み合わせた測位システムを行っているが、18年度から4機体制に移行。23年度には7機体制とし、米国のGPSに頼らないシステムとなる。  みちびきが本格稼働すれば、ビルの多い都市部での測位精度が向上すると期待される。さらに位置の誤差を数センチメートルにまで修正する高精度測位機能は、米国のGPSや欧州の測位衛星「ガリレオ」が持つ1メートル以上の位置精度と比べ優位性が高い。

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