打ち上げ迫る!なぜイプシロン3号機は日本の宇宙産業にとって大事なのか

初の受託衛星搭載、今後のロケット開発につながる

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日6時ごろ、小型固体燃料ロケット「イプシロン」3号機を使い、高性能小型レーダー衛星「ASNARO―2」(アスナロ2)を打ち上げる。イプシロンにとって受託衛星を載せた打ち上げは初めてとなり、JAXAとしては成功によって急成長する小型衛星の打ち上げ市場を取り込みたい考えだ。アスナロ2は防災や環境などの分野で需要が高まる衛星画像の商用利用に期待が高まる。官民による宇宙利用の拡大が進む。

 イプシロン3号機は2013年打ち上げの試験機に比べ、衛星を収めるフェアリング(ロケット先頭部)内の体積拡大や打ち上げ能力を向上させた「強化型」。全長26メートル、質量は96トン。多くの地球観測衛星で使う、同一地点の上空を同一時間帯で通過する「太陽同期準回帰軌道」へ、イプシロンとして初めて投入する。製造費は40億円。

 3号機には軌道への投入精度を高めるための機構「PBS」を改良し取り付けた。JAXAイプシロンロケットプロジェクトチームの井元隆行プロジェクトマネージャは、「推進薬タンクを大型化し、燃焼中の機体の姿勢を調整する液体推進システム『ラムライン推進系』を削除するなど、複雑なシステムを簡素化し、信頼性を向上させた」と説明する。

 イプシロンは4号機以降、JAXAが機体の性能を決める要求設計のみを手がけ、製造をIHIの100%子会社であるIHIエアロスペース(東京都江東区)に一元化しコスト削減を図る。

 JAXA側は今まで製造にかけてきた人的資源を研究開発に振り向けられる。井元プロジェクトマネージャは「年1回の確実な打ち上げを目指していく」と強調。4号機以降の開発では一度に複数の衛星の軌道投入も検討している。

 一方、アスナロ2では地表を1メートルの空間解像度で撮影する「合成開口レーダー」(SAR)を搭載する。曇りや夜間でも地表を見られることが特徴で、災害状況把握や国土管理、資源管理などへの利用が期待されている。経済産業省の助成事業でNECが開発した。

 NECは運用だけでなく稼働する衛星の可視化や撮影画像の配信などの機能を持つ地上システムを開発しており、4月からアスナロ2を運用する。9月からは撮影した画像の販売を始める計画だ。製造と運用、画像販売までを手がけるサービスは国内では初めて。

 さらに「画像だけでなく地上システムなどのインフラをセットにして、衛星を持たない新興国など世界で販売したい」(清水基充ナショナルセキュリティ・ソリューション事業部事業部長代理)としている。
(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2018年1月12日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
01月14日
この記事のファシリテーター

 ここで培われた技術は20年打ち上げ予定の新型基幹ロケット「H3」など今後のロケット開発につながっていく。さらにH2Aロケット30号機で実証した低衝撃型衛星分離機構をイプシロンでも適用する実証実験を行う。衛星分離の際の衝撃レベルを要求水準に比べ、500G(Gは重力加速度)以下に半減できるという。 「搭載する衛星への衝撃が小さくなれば故障のリスクを減らせる。さまざまな衛星の打ち上げ需要に対応できる」(井元プロジェクトマネージャ)ため、衛星打ち上げビジネスでの長所となる。
(日刊工業新聞科学技術部・冨井哲雄)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。