石油元売り最大手JXTGを悩ます電気自動車の波

業績絶好調も中長期見通せず

 石油元売り最大手のJXTGホールディングスが次世代を見据えた体制づくりを急いでいる。原油価格の上昇と原油処理能力の削減による需給適正化で足元の業績は好調だが、「電気自動車(EV)時代」の足音が確実に大きくなっているからだ。EV対応に伴う製販体制の見直しと収益源の多様化が課題になる。

 「この1年の変化は大きい。危機感はかなり増した」。HDの中核会社であるJXTGエネルギーの杉森務社長は2017年末に現状認識をこう示した。

 石油元売り各社は人口減少とEVの普及でガソリン需要が中長期的に減少することは織り込み済み。とはいえ、17年にEV時代が一気に近づいてきたのは想定外だっただろう。

 各国が相次いでガソリン・軽油車の販売を停止する方針を示し、最大市場の中国も近い将来のガソリン車の禁止を打ち出した。EVシフトに出遅れ感のあった日系メーカーも重い腰を上げ、堅調な業績の石油元売り各社も中長期の不透明感が増す。

 JXTGは国内のガソリンシェア5割を超え、1万3000の給油所を展開するだけに業界のみならず地方経済への影響も大きい。社内に専門のチームを立ち上げ、「EV向けの利用など給油所のさまざまな活用を検討している」と語る。

 EV対応だけでなく、新事業の種もまく。研究開発を強化している機能材分野では25年度頃までに10以上の製品を事業化し、それらの利益で100億円以上を目指す。自社コークスを原料としたリチウムイオン電池用の性能を高めた電極材や再生医療用の素材の開発構想がある。

 豊岡武裕機能材事業化推進部長は自社の開発体制を「100点を目指さない」と語る。要素技術は荒削りな段階でも展示会などに出品し、市場のニーズを探る。

 有望と見込んだテーマは担当者を増員したプロジェクトチームを編成し、事業化にかかる期間を短縮する。開発現場に柔軟さと速さを兼ねそなえることで、意思決定が早い海外メーカーなどからも取りこぼしをなくす。

 石油元売り各社はガソリン需要の緩やかな減少に対応するように、事業構造も変えていくことになることは間違いない。給油所など拠点の有効活用や、石油精製の連産品や精製過程で培った技術をいかに活用するか。

 業界の「巨人」の取り組みは、日本にEV時代がいつ本格的に到来するかを計る指標になるかもしれない。
(文=栗下直也)

日刊工業新聞2018年2月14日

栗下 直也

栗下 直也
02月14日
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一時期はEVより燃費向上が石油元売りの懸念でしたが、昨年の年央以降、一気にEVシフトが鮮明に。石油全体の需要は新興国を中心に2040年くらいまでは右肩上がりが続きそうですが、長期を見据えた事業ポートフォリオの見直しにどこまで踏み込むか真剣に向き合う時期にきたかと。

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