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JX・東燃ゼネ、統合へ最終合意。まずは製油所の再編から?

国内先細り、石油大再編はどこへ向かう
 石油業界再編の本番が幕を開けた。元売り国内首位のJXホールディングス(HD)と3位の東燃ゼネラル石油が、2017年4月の経営統合に最終合意し、本格的な統合協議入りに向け、公正取引委員会の審査結果を待つばかりとなった。出光興産と昭和シェル石油の合併構想は、出光創業家の反対で不透明感が増しているが、石油製品の国内需要が先細りする中で、石油業界の再編は避けて通れない課題。業界構造の抜本改革に向けた各社の本気度が問われる。


(左から武藤潤東燃ゼネ社長、木村康JXHD会長、内田幸雄JXHD社長)

川崎、根岸、大阪などが焦点に


 JXHDと東燃ゼネラル石油は31日、統合で発足する新会社の名称を「JXTGホールディングス」とし、社長にJXHDの内田幸雄社長を起用することなどで合意した。

 JXHD傘下のJXエネルギーが存続会社となって東燃ゼネラル石油と合併し、東燃ゼネラルの株主にJXTGHD株を割り当てる株式交換方式を採用。公取委の審査結果が出るのを待って統合協議を本格化し、それぞれ12月に招集する臨時株主総会で承認を求める。

 新会社は連結の売上高が単純合計で11兆円強(15年度実績)、国内のガソリン販売シェアが5割を超す巨大石油元売りとなる。統合後、国内計11カ所の製油所や油槽所、物流部門、管理部門の合理化や効率化を急ぎ、当初は統合から5年後としていた年間の収益改善効果1000億円の前倒し実現を目指す。

 製油所再編では1964年の操業開始と老朽化が進み、東燃ゼネラルの川崎工場(川崎市川崎区)と地理的に近いJXグループの根岸製油所(横浜市磯子区)や、地理的に重なるJXグループの大阪製油所(大阪府高石市)と東燃ゼネラルの堺工場(堺市西区)の行方が焦点となる。

 東燃ゼネラルの武藤潤社長は31日の会見で、製油所の統廃合について「統合後、速やかに検討を始め、数年以内に具体策をまとめたい」と述べた。

視線はアジアに


 人口減少などに伴う国内市場の縮小で過剰になった生産設備を見直し、需給バランスを適正化して石油精製マージンの改善につなげる。国内事業の基盤強化をバネに、アジアなどの成長市場の開拓に力を入れる方針だ。

 JXHD傘下で石油元売り事業を担うJXエネルギーの杉森務社長は「石油の国内需要は確実に減る。需要に見合う生産体制の構築が必要だが、1社でやれることには限界がある」と経営統合の意義を強調。

 東燃ゼネラルの武藤社長は「石油精製・元売りは、原油価格の変動で収益がぶれる可能性がある。このような中で投資に必要な収益をどう確保するかを考えた結果、JXHDとの統合に行き着いた」と明かす。

どうなる出光・昭和シェル


 統合への準備を着々と進めるJXHD・東燃ゼネラル陣営とは対照的に、出光興産と昭和シェル石油の合併構想は、出光創業家の強硬な反対に遭い、先行き不透明感が強まっている。

 創業家側は出光の大株主で創業家の出光昭介氏が、昭和シェル株を40万株取得したことで、出光の昭和シェル株取得には金融商品取引法上、株式公開買い付け(TOB)の手続きが必要になったと主張。合併阻止の姿勢を鮮明にした。

 出光は英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)グループが保有する昭和シェル株33・2%を9月にも相対取引で取得する予定だったが、TOBに踏み切るとなると想定より多額の資金がかかり、合併の難易度が上がる。

 経営側は昭介氏が金商法における「特別関係者」に該当し、出光の昭和シェル株取得にTOBの手続きが必要になるかどうかを金融庁と協議した上で、今後の対応を検討するとしている。

 ただTOBを回避できても、出光が12月にも開く臨時株主総会で、創業家側が合併に反対票を投じれば、承認を得られなくなる可能性がある。

合併頓挫はJX・東燃に本当に追い風?


 仮に出光と昭和シェルの合併が頓挫した場合、JXHDと東燃ゼネラルにとって、統合への強い追い風になる可能性がある。企業統合に関する公取委の審査を通りやすくなると見られるためだ。

 独占禁止法に基づく公取委の審査では、市場の寡占化が進むことで、競争が阻害される可能性がないかどうかを重視する。シェアが大きい企業が複数あれば、これらが足並みをそろえて価格をつり上げるといったことが想定されるため、公取委は出光・昭和シェルの合併がもたらす影響も織り込んで、JXHD・東燃ゼネラルの審査を進めてきた。

 仮に出光・昭和シェルの合併が危うくなった場合には「JXHDと東燃ゼネラルの審査も前提が変わる」(公取委事務局幹部)としている。

 東燃ゼネラルの武藤社長は「JXとの統合で寡占状態になり、公正な取引が行われなくなるのではないかと心配する声があるが、独占・寡占の利益をむさぼるようなことは許されない」とし、統合の成果を「社会に還元したい」と強調する。

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日刊工業新聞2016年9月1日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
関連記事にある東京理科大の橘川教授のインタビューはとても示唆に富むのでぜひ一緒にご覧下さい。 JXと東燃では、石油と石油化学の一体化に注目している。

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