「カメラ用アクチュエーターは、複眼(デュアル)カメラを搭載する高機能機種で採用が進んでいる。現在は北米向けのシェアが高いため、今後は中国・韓国向けに拡販する。一方、触覚デバイスは基本ソフト(OS)『アンドロイド』を使った端末には搭載が進んでいない。従来の振動モーターから触覚デバイスに代替させるためには、付加価値を明確にしなければいけない。触覚に関わるソフトウエアが普及すれば、さらに訴求しやすくなる」
―触覚デバイスはスマホ以外の領域でも話題を集めています。
「2017年はゲーム向けで大きく伸びた。18年は未採用の機種や他のゲームメーカーに訴求していく。さらに次の市場として捉えているのは医療や産業機器と、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)の分野だ。VR・AR端末を利用した体験型のソリューションが増えており、量産が見込める」
―今後、力を注ぐ分野は。
「ティア2のビジネスとなる自動車向け電子部品事業は数年先まで受注が決まっているため、良くも悪くも変動が少ない。現在は活況のため、規模を拡大しつつ、10%以上の営業利益率も狙える。車載事業の営業利益率は5%以上が目標だが、19年4月には子会社のアルパインと経営統合して『アルプスHD』を発足するため、将来は同事業の売上高を6000億円に、営業利益率を10%以上にできるだろう」
―経営統合をめぐっては、アルパインの株主である香港のヘッジファンドのオアシス・マネジメント・カンパニーが「株式交換の比率などが公正ではない」と異議を唱えています。
「確かにアルパインの株主は高い比率を求めているが、当社株主にとっては低い比率の方が良い。その点では両社の利益は相反関係にあり、企業としては全ての株主に応える責任がある。だからこそ、経営統合のスキームは第三者も交えた上で検討した。株式交換を用いた経営統合は希薄化を招くが、それを補って余りあるシナジーがあると考えている。また、アルパインの他の株主からは反対の声がなく、当社の株主などからは賛同を得ている」
―今後の対応は。
「株式交換比率の変更やTOB(株式公開買い付け)への切り替えは考えていない。引き続き、経営統合計画の妥当性や具体的なシナジーをアルパインと一緒に説明していく。18年春をめどに詳細を発表する」

栗山年弘社長インタビュー
(聞き手=渡辺光太)
日刊工業新聞 記者
01月20日
アルプス電気が19年4月をめどにした子会社のアルパインとの経営統合に踏み切ったのも、自動車の電装化の加速が背景にある。同社は経営統合を長年模索していたが、今後は持ち株会社「アルプスエイチディー(HD)」を設立し、アルプス電気の部品とアルパインのソフトウエアなどを融合して次世代自動車向けの需要を取り込む。アルプス電気にとってアルパインの手がけるカーナビゲーションシステムは、電子部品の顧客と競合するという難しさを抱えていた。だが自動車の電装化・高度化で、この難しさがメリットに変わるかもしれない。すでに自動運転を想定し、電子シフターやカーナビのほか座席やドアなどの部位にも搭載でき、ジェスチャーなどで入力できる車載用デバイスを開発。さらにシナジーを追求する。
(日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)
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