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求む!有能なパートナー、商社で広がる「農業ICT」

収穫時期予測・作業効率化
 商社で農業にICTを導入する動きが広がっている。三井物産は出資するカナダの農業ICT事業者、ファーマーズ・エッジを通じ、米国の衛星画像事業会社と提携。画像解析による農業の高度化に取り組む。三菱商事はICTで農作業や農地を一括管理する営農支援システムなどを開発する、日本のベンチャー企業に出資。ICT技術を活用した精密農業は、食糧需要の拡大で期待が高まっている。

 三井物産が出資するファーマーズ・エッジは、米プラネット・ラブズと2017年10月に提携。プラネット・ラブズから衛星画像の独占販売権を取得した。これまで年数回しかできなかった衛星画像の取得が、ほぼ毎日可能となる。衛星画像を活用し、生育状況のモニタリングの精度を高め、農薬の散布や病気の把握、収穫時期の判定の精度を高める。

 ファーマーズ・エッジは、衛星画像の取得頻度の向上に合わせて、画像分析技術を強化。作付け前の農作業の計画だけでなく、生育状況のモニタリングや農薬散布など、日々の農作業にも活用することで、大幅な効率化を図る。

 三井物産は16年3月にファーマーズ・エッジに約5%出資し、同年12月に30億円を追加出資して連結関係子会社化した。三井物産のチーフデジタルオフィサー(CDO)である北森信明常務執行役員は「デジタルパワーは事業のボトムラインを上げることができる」と、ICT活用の意義を強調する。

 三菱商事は17年12月に、農業ICT事業のベンチャー企業であるベジタリア(東京都渋谷区)に約5億円を出資した。ベジタリアは農地や水田の温度や水分のほか、気温や湿度などを基に、収穫時期の予測や病虫害の予察など、営農支援サービスを提供している。

 三菱商事ではベジタリアのツールを普及することで、ビッグデータの蓄積を支援。農業関連事業の顧客基盤と組み合わせることで、データの相互活用を目指すほか、新たなソリューションの開発やプラットフォームの構築につなげる。

 米調査会社のマーケッツアンドマーケッツは、農業IT分野の市場規模が15年の32億ドルから、22年には79億ドルまで伸びると予測。ICTを活用した精密農業は、農業を取り巻く課題解決の手段の一つとして期待が高い。伊藤忠商事の岡藤正広社長は「これまでIT企業と商社にはあまり接点がなかった」と話す。ICTの分野でいかに有能なパートナーを見つけ出すかが、勝敗の鍵となりそうだ。
日刊工業新聞2018年1月11日 建設・エネルギー・生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
大手商社では、AIやIoTの活用を促進するため、これまで取引があまりなかった、IT関連企業との接点をふやすべく、社内に新たな組織を設置したり、役職置いたりしています。このように、商社内で、事業本部の枠にとらわれず、横の連携を強める動きは、今後も加速していくのではないかと思います。

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