【アサヒ会長・泉谷直木】「私が理想とする組織は桃太郎軍団」
「初代」はトップ自身が率先して学び、後はチームの成長に委ねる
私が理想とする組織は「桃太郎軍団」である。高度成長時代は、画一的な能力を持つ「金太郎飴(あめ)集団」が力を発揮した。だが変化の激しい時代、これでは生き抜けない。
さまざまな能力や個性を持つ人材を束ね、チームとしての力を最大化することこそ、組織の強みになる。キジの俯瞰(ふかん)力や猿の機転、犬の嗅覚。桃太郎はこれら能力を駆使し、きびだんごをインセンティブに鬼退治という目標を達成する。
なぜ、こうした組織論に行き着いたのか。ひとつは、事業領域や経営課題は今や多岐にわたり、すべてを経営トップ自らが判断できるほど甘くない現実がある。もうひとつ強く影響を及ぼしているのが、私自身のキャリアの軌跡である。
決して本流を歩んできたわけではないサラリーマン生活で、30代半ばを前に当時の村井勉社長にコーポレート・アイデンティティー(CI)の策定を命じられ、多彩な人材が集うプロジェクトに携わったことは転機となった。波間から朝日が昇るかつてのロゴマークを現在のデザインに変更したのは、スーパードライ発売の前年の1986年である。
以来、新たな組織の立ち上げに数多く携わり、私の肩書は「初代」がつくものが多い。広報企画課長に始まり、経営戦略部でも初代部長。役員時代に設置したグループ戦略本部の本部長、持ち株会社化した現在のアサヒグループホールディングスでも初代社長だ。
新しい組織は発足自体に意味があるのではなく、所期の目的を達成し続けるサイクルを確立できるかが問われる。「教科書」には書いていない前例がないことを学び、自社の血肉としていくには、トップ自身が率先して学び、後はチームの成長に委ねることが肝要だ。「初代」続きは振り返れば新たな壁に直面し、正直しんどいこともあった。
今では笑い話だが、皆が同じ本を机の下に隠し「初もの」を議論していたこともある。しかしこういう姿勢こそ大切で、学び続ける、成長し続ける組織は私の理想である。
「組織は戦略に従う」(チャンドラー)、「戦略は組織に従う」(アンゾフ)―。この2人の著名な経営学者による考え方は対立しているかに見える。だが、双方をうまく組み合わせるのが経営の本筋であり、どちらかが主従するものではない。これが私が至った結論だ。
さまざまな能力や個性を持つ人材を束ね、チームとしての力を最大化することこそ、組織の強みになる。キジの俯瞰(ふかん)力や猿の機転、犬の嗅覚。桃太郎はこれら能力を駆使し、きびだんごをインセンティブに鬼退治という目標を達成する。
なぜ、こうした組織論に行き着いたのか。ひとつは、事業領域や経営課題は今や多岐にわたり、すべてを経営トップ自らが判断できるほど甘くない現実がある。もうひとつ強く影響を及ぼしているのが、私自身のキャリアの軌跡である。
決して本流を歩んできたわけではないサラリーマン生活で、30代半ばを前に当時の村井勉社長にコーポレート・アイデンティティー(CI)の策定を命じられ、多彩な人材が集うプロジェクトに携わったことは転機となった。波間から朝日が昇るかつてのロゴマークを現在のデザインに変更したのは、スーパードライ発売の前年の1986年である。
以来、新たな組織の立ち上げに数多く携わり、私の肩書は「初代」がつくものが多い。広報企画課長に始まり、経営戦略部でも初代部長。役員時代に設置したグループ戦略本部の本部長、持ち株会社化した現在のアサヒグループホールディングスでも初代社長だ。
新しい組織は発足自体に意味があるのではなく、所期の目的を達成し続けるサイクルを確立できるかが問われる。「教科書」には書いていない前例がないことを学び、自社の血肉としていくには、トップ自身が率先して学び、後はチームの成長に委ねることが肝要だ。「初代」続きは振り返れば新たな壁に直面し、正直しんどいこともあった。
今では笑い話だが、皆が同じ本を机の下に隠し「初もの」を議論していたこともある。しかしこういう姿勢こそ大切で、学び続ける、成長し続ける組織は私の理想である。
「組織は戦略に従う」(チャンドラー)、「戦略は組織に従う」(アンゾフ)―。この2人の著名な経営学者による考え方は対立しているかに見える。だが、双方をうまく組み合わせるのが経営の本筋であり、どちらかが主従するものではない。これが私が至った結論だ。
日刊工業新聞2017年11月30日