豊田章男の後継者は1000人以上

変わるトヨタの組織とリーダー育成。次の社長は部次長から?

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前列左から、豊田章男社長、加藤光久副社長、寺師茂樹副社長
 愛知県豊田市、トヨタ自動車本社。幹部が新たな取り組み案を意気揚々と語っていた。しかし社長の豊田章男は次第にあきれた顔になっていった。「それは誰のためなの?自分のためでしょ?そういうのはいらない」。

 後継者育成―。社長就任8年目、還暦を迎えた豊田が今、一番頭を痛める問題だろう。

 創業家の豊田の後釜は、“サラリーマン社長”になることは間違いない。ただ、豊田が求めるリーダーはサラリーマンであっても長期的視野を持ち、刈り取りと種まきのバランスのとれる人物。そして公益資本主義を唱えるトヨタとして、日本や業界全体のことまで考えられる経営者だ。

 「(次のトヨタの社長は)従来のような機能を深掘りして副社長まで上がるような人には無理だろう」(首脳)。これまでトヨタは各副社長が生産、営業などの事業を統括し、その下に専務を置いていた。

 しかし4月にスタートした新体制では社内カンパニー制を導入。カンパニーが従来のような機能軸ではなく製品軸で企画から生産までを一貫して担当する。豊田は後継者育成を強く意識し、この制度を導入した。

 カンパニートップであるプレジデントは7人誕生した。プレジデントは基本的には専務役員が、エグゼクティブヴァイスプレジデントには常務役員が就任。権限をより現場に近い若い世代に移し、経営の経験を積ませる仕組みとした。

 プレジデントに就任したのは「情熱のある人たち」(首脳)。「先進技術開発カンパニー」プレジデントについたのは伊勢清貴。豊田の“懐刀”とも呼ばれる。2012年から高級車ブランド「レクサス」事業の改革を断行した。

 「コネクティッドカンパニー」の友山茂樹は20年ほど前、豊田と二人三脚でIT事業を立ち上げ、今日まで進化させてきた。「パワートレーンカンパニー」の水島寿之はアイシン精機出身という異例のプレジデント。「トヨタはここがおかしい」など新風を吹き込んでいる。

 一方、副社長陣は15年の6人から4人にスリム化し主に全社組織であるヘッドオフィスを担当、豊田の脇を固める。提携交渉などの陣頭指揮を執ってきた寺師茂樹は中長期戦略企画を担うコーポレート戦略部を担当。今のトヨタの“軍師”だ。 

 トヨタ初の外国人副社長であるディディエ・ルロワは、チーフコンペティティブオフィサー(CCO)。実直な人柄で外国人の目線とトヨタ流を持ち合わせるルロワは「どんな化学反応を起こすか楽しみ」(首脳)と注目されている。

 大規模な組織変革を通じて「次世代リーダーズ」育成を加速させるトヨタ。豊田が次期社長候補としてとらえているのは役員に限らない。「私が説明会をする部次長ら(を含め)全員が対象になる」(豊田)。その数は1000人に上る。

 「どんな考えを持ったどんなリーダーが出てくるか」。豊田は後継者候補の出現をワクワクして待っているようだ。(敬称略)

日刊工業新聞2016年11月4日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

章男社長の後任は、当然、章男さんと同じことをできるわがない。章男さんがあと何年社長を務めるか分からないが、その後も会長、創業家として永く大きな影響力を持ち続けるのは間違いない。自分の後継を選ぶ時に、何を最優先するか。自分と比較的考え方が似たタイプ?それとも正反対?誰がリーダーになるにしても(章男社長の続投を含め)、これから10年の間に起こるだろう自動車業界の大変革と対峙し、寄りそっていく、しなやかな人物でないと務まらない。

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