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「『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦い」 トヨタが役員人事を1月に前倒し

米AI子会社のギル・プラット氏らが副社長で昇格
「『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦い」 トヨタが役員人事を1月に前倒し

豊田章男社長

 トヨタ自動車は28日、2018年1月1日付の新役員人事と組織改正を発表した。副社長には相談役でデンソー副会長の小林耕士氏(69)、友山茂樹専務役員(59)、吉田守孝専務役員(60)の3氏が就く。また高い専門性を持つ役員として新たに「フェロー」職を設置し、米子会社のギル・プラット最高経営責任者(CEO、56)が副社長格で就任する。女性役員の登用やトヨタグループ内の人事交流も進め、経営体制を強化する。

 トヨタの執行役員人事は4月が通例だったが、今回は1月の組織改正に合わせて前倒しした。豊田章男社長(61)は「自動車業界は100年に一度の大変革の時代に入った。『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いが始まっている。トヨタグループの持てる力を結集することが不可欠」と人事の狙いを語った。

 財務担当の永田理副社長(60)は退任し、取締役を継続する。これによりトヨタの副社長は現在の4人から6人体制となる。

 組織改正では国内販売の体制を見直し、系列販売店ごとのチャネル制から地域制に変える。トヨタ生産方式(TPS)を生産部門以外に広げるため「TPS本部」を新設する。

 1月1日付の人事では専務役員に新たに5人が就任する。小林一弘(60)、小川哲男(58)、澤良宏(60)、白柳正義(55)の4常務役員が昇格するほか、トヨタ出身でアドヴィックス社長の小木曽聡氏(56)も就任。増井敬二(63)、大西弘致(64)、福市得雄(66)、伊勢清貴(62)、水島寿之(58)、大竹哲也(57)の6専務役員は退任。専務役員は計14人体制となる。

 専務役員を退任する6氏のうち、伊勢氏はアイシン精機社長、大竹氏はアドヴィックス(愛知県刈谷市)社長への就任がそれぞれ内定した。一方、アイシン出身で15年にトヨタのグループ会社から初めてトヨタ役員に就いた水島氏はアイシンに副社長として復帰する。

 常務役員には新たに13氏が就任する。氏名、年齢と現在の役職は次の通り。

 朝倉正司常務理事(59)、宮本眞志常務理事(59)、福留朗裕三井住友銀行常務執行役員(54)、岡田政道常務理事(56)、今井斗志光豊田通商執行役員(52)、石井直生渉外・広報本部渉外部部長(54)、加古慈レクサスインターナショナルチーフエンジニア(50)、好田博昭CVカンパニーCV統括部部長(52)、前田昌彦CVカンパニーチーフエンジニア(48)、松田進マーケティング部部長(52)、長田准国内販売事業本部国内企画部部長(51)、西村祐調達本部調達企画部部長(51)、山岡正博渉外・広報本部広報部部長(56)。

 このうち、トヨタの高級車「レクサス」部門でチーフエンジニアを務める加古氏は生え抜きの女性として初の役員に就任する。三井住友銀行の福留常務執行役員、豊田通商の今井執行役員ら、社外からの役員登用も進める。

 犬塚力(58)、小寺信也(55)、福井弘之(57)、山本卓(60)、磯谷健(62)、マーク・テンプリン(56)、西利之(56)の7常務役員は退任する。これにより、常務役員は計31人体制となる。

 常務役員と同格に位置付ける常務理事の職には新たに9人が就任し、3人が退任。計26人体制となる。
日刊工業新聞電子版2017年11月28日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
通常の役員人事は4月。人事はスピード感を表す象徴の一つだ。社内外へ「変わるトヨタ」というメッセージを発信することになる。一方で新しいマネジメントチームが従来とどのように意思決定プロセスやスピードが変わるのかを注意深く見ていきたい。

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