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小売りやメーカー、廃棄食品の削減に動く

イオン、25年までに15年度比半減目標
小売りやメーカー、廃棄食品の削減に動く

来店者にも食品ロス削減を呼びかける(東京都江戸川区のイオン葛西店)

 イオンは2025年までに食品廃棄物を15年度比で半減する目標を発表した。プライベートブランドのうち、賞味期限が1年以上ある加工食品の賞味期限表示を2年以内に、年月日から年月に変える。

 食品廃棄物を堆肥にリサイクルしてイオンの直営農場で使い、収穫物をイオン店舗で売るといった循環モデルを、全国10カ所以上で構築する。

 国連は30年に向けた「持続可能な開発目標(SDGs)」で小売り・消費レベルでの食品廃棄物を半減する目標を掲げており、イオンは5年早い達成を目指す。

 三宅香執行役は「計量器を導入して、品目ごとの排出量を把握するなど、見える化に取り組む。お客さまにも、食品ロス削減を呼びかける」と述べた。

日刊工業新聞2017年10月17日



セブンは廃棄食品を養鶏に


 セブン―イレブン・ジャパン(東京都千代田区、古屋一樹社長)は店舗で販売期限切れとなった食品由来の飼料を使って生産した鶏卵を活用する。東京都と埼玉県のセブン―イレブン約1300店が排出した食品を取引先が配合飼料に加工し、指定の養鶏農場で使う。生産した鶏卵をセブン―イレブンの専用工場で、チルド弁当の材料にする。

 これまでも販売期限切れの弁当や総菜を回収し、家畜用配合飼料の原料にしてきた。今回は養鶏や弁当生産まで関与し、循環型リサイクルを確立した。

日刊工業新聞2016年8月22日の記事から抜粋



賞味期限を「年月」表示に続々切り替え


 サントリー食品インターナショナルは飲料商品で賞味期間の年月日表示から年月表示への切り替えを拡大する。現在の賞味期間1年以上の商品に加え、2018年1月から新たに賞味期間8―11カ月の商品へも対象を広げる。

 同年末にはサントリー食品全商品の約9割が年月表示となり、構成比率は現在の6割から1・5倍に拡大する。キリンビバレッジやアサヒ飲料、伊藤園なども同様の取り組みを進めている。

 年月表示の切り替えは食品ロスの削減と、トラック物流などの効率化が狙い。生鮮食品に慣れた消費者は元来、保存がきく飲料商品の賞味年月日も過度に気にする傾向がある。

 十分飲めるにも関わらずスーパーやドラッグストアからの返品負担を招き、収益を悪化する一因にもなっている。物流の配送回数も減り、二酸化炭素(CO2)の排出やドライバーの負担を削減できる。

 サントリー食品の商品では、緑茶「伊右衛門」や「ヨーグリーナ&サントリー天然水」「GREEN DA・KA・RA」などで年月表示へ切り替えを進める。

 食品メーカーに、商品の賞味期限を延長する動きが広がっている。ヤクルト本社は17日、ヨーグルト「ソフールLT」「同ストロベリー」の賞味期限を製造18日後から21日後に延長すると発表した。味の素AGF(東京都渋谷区、品田英明社長)も家庭用製品の約9割の賞味期限表示を、2017年度中に年月日から年月に切り替える考えだ。フードロス削減や物流部門効率化ニーズを背景に、動きはさらに広がりそうだ。

 ヤクルト本社の賞味期限延長は「数年以前から検討していた」(同社)。社内実験で18日を過ぎても味、品質に問題がないことを確認し、決断した。他の日配商品でも検討する考えだ。味の素AGFの賞味期限年月表示は、親会社である味の素に続く取り組み。店舗や倉庫の管理対象ロット数減少や保管スペース削減が期待できる。

 飲料メーカーでもキリンビバレッジなどが一部商品で年月表示変更を実施している。ただ、店頭で消費者が製造年月日を確認する傾向は根強く、実行には小売店側の理解と協力が不可欠になる。

日刊工業新聞2017年8月18日/9月22日



気象予測も生かす


 日本気象協会は協会の気象予測情報を生かした省エネ物流プロジェクトの最終報告を発表した。気象情報を使った食品の需要予測について、製造業での予測誤差をほぼゼロにした。さらに同予測を使い食品の生産量をメーカーが調整した結果、在庫の削減につながったという。

 大豆加工食品の製造・販売を手がける相模屋食料(前橋市)は、人工知能(AI)と気象予測を使い特定の小売店での需要予測を実施。注文を受けてから生産を始めた結果、予測誤差はほぼなかった。

 一方、ミツカンは需要予測を基に冷やし中華つゆの最終生産量を調整。その結果、150ミリリットル入りの商品の最終在庫を2015年比で約20%削減。取り組み初年度からは約35%削減した。また16年度に発売した360ミリリットル入りの商品は、15年に比べ最終在庫を約90%削減できたという。

 協会は食品ロスの削減と、返品・返送、廃棄などで不要に発生している二酸化炭素(CO2)の削減を目指し、14年度から同プロジェクトに取り組んできた。

日刊工業新聞2017年6月6日

江上佑美子
江上佑美子 Egami Yumiko 科学技術部 記者
学生時代に食品工場でアルバイトをした際、廃棄食品が積み上げられていくのを見て衝撃を受けました。環境省及び農林水産省の発表では、2014年度の食品廃棄物は2,775万トン、このうち食べられるのに捨てられている食品ロスは621万トンだそうです。食品ロスをゼロにするのは不可能に近いですが、削減に向け工夫する必要はあると思わされます。

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