「自販機を再発明」するのは誰だ!

進む高機能化、“社会インフラ”として活躍の場広がる

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おにぎりやサンドイッチを扱うセブン―イレブン・ジャパンの自販機(同社提供)
 自動販売機の高機能化が進んでいる。きめ細かいマーケティングなどに加えて、子どもや高齢者の見守り、健康維持の支援など多様な機能を獲得。国内小売り業界最強のコンビニエンスストア各社も、飽和が取り沙汰される市場に風穴を開けるため“自販機コンビニ”の展開を始めた。自販機の“社会インフラ化”、情報通信技術(ICT)との融合が進んでおり、新たな市場の創出も期待できそうだ。

飲料各社、「見守り」から誕生日プレゼントまで


 アサヒ飲料やキリンビバレッジなどは自動販売機を活用した高齢者や子どもの見守りサービスに取り組んでいる。アサヒ飲料は情報通信研究機構(NICT)と東京都墨田区で、キリンビバは東京電力ホールディングスやotta(福岡市中央区)と同渋谷区で実証実験をスタート。

 ビーコン端末を持った高齢者や子どもが自販機の前を通りかかると、自販機の位置情報から特定場所を割り出し、家族などにスマートフォンで情報を伝える。高齢化や核家族化の進行に対応した見守り機能を、街中に設置した自販機で補う試みだ。
高齢者などの見守りサービスの画面。墨田区内を走るタクシー会社などとも連携する

 自販機と、それを用いたサービスの高度化は日進月歩で進んでいる。日本コカ・コーラやキリンビバは、特定自販機で飲料を買うとポイントがたまり、好きな1本と無料交換するサービスを展開する。日本コカのサービスにはスマホを通じた会員登録が必要で、利用客の詳細な購買データがわかる。

 履歴情報に会員情報を組み合わせれば誕生日にコーラを無料プレゼントしたり、映画やコンサートに合わせた割引メールの送付なども可能。他社自販機に流れる顧客を“囲い込み”できる。

 サントリー食品インターナショナルはオフィス内の自販機などを対象に、飲料を買ったり、エレベーターに乗らずに階段で歩いたりするとポイントがたまり、特定保健食品の飲料と交換できるサービス「サントリーGREEN+」を始めた。入居企業が決まっているため、顧客を囲い込みやすいオフィス内自販機に照準を絞った取り組みだ。

 自販機を通じて“地域”と“全国”をつなぐ機能も期待できそうだ。キリンビバでは「京都の寺院など特定の観光エリアでは“力水”が売れている」と話す。

 力水は漢字の商品名と金色のパッケージで中国人観光客に人気が高く、日本土産に数十本まとめ買いする人もいる。こうした販売地域が限定されたご当地商品などは、全国展開のスーパーやコンビニでは扱いが困難。だが、自販機なら全国の観光地などでピンポイント販売も可能だ。

 飲料の販売以外でも、ダイドードリンコは忘れ物の傘をリサイクルし、自販機に備え付けて雨の日などに無料で貸し出す「レンタルアンブレラ」サービスを東名阪の3大都市圏で開始した。伊藤園はスマホゲーム「ポケモンGO」と連動し、自販機をポケストップに見立てて集客を図る取り組みを始めるなど、自販機の機能が多様化している。
京都の観光地の自販機では中国人観光客に「力水」が人気だ

コンビニ−“マイクロマーケット”発掘


 大手コンビニエンスストアも自販機の設置に乗り出した。国内のコンビニ店舗は5万5000店を超え、飽和状態との声もある。しかしオフィスビルや工場の中など従来型店舗を出すのは難しいものの、消費需要が見込める“マイクロマーケット”はまだまだ多く、発掘に各社がしのぎを削っている。

 ひとくちに“自販機コンビニ”といっても内容は各社各様だ。先行するファミリーマートは2005年、弁当やサラダなどを販売する「自販機コンビニ」の設置を開始。

 現在は1600カ所に約2100台を設置。“ランチ難民”対策でオフィスにあるほか、学校や病院などにも置いている。売り上げ分析システムと連動し人気商品や新商品を並べ、飽きさせない工夫もしている。

 同社では19年2月末までに3000台に拡大する予定で、佐藤英成常務執行役員は「積極導入する。これからコンビニが24時間営業しなくなる場合にも、自販機コンビニは活躍する」と意欲的だ。

 ファミマは13年から電源不要のボックス「オフィスファミマ」も設置している。菓子やカップラーメンなど保存が利く常温商品を扱い、代金は箱に入れる方式だ。16年12月に展開を始めた「オフィスファミマカフェ」では、入れたてコーヒーを提供している。

 セブン―イレブン・ジャパンはおにぎりやサンドイッチなどの自社商品を扱う自販機のテスト設置を始めた。18年2月末までに100台に設置する見込みで、近隣の店舗が自販機を管理する。

 自販機は四つの温度帯に対応し、販売期限が切れると販売機能を停止する機能を搭載した。石橋誠一郎取締役執行役員は「加盟店がそれほど手を掛けず、利益を上げる一助になる。飲料自販機メーカーと立地などの情報を共有し、ウィン―ウィンの関係を築ける」と話す。

無線セルフレジ


 ローソンはオフィス内に的を絞り、無線セルフレジを搭載したボックス「プチローソン」の設置を東京23区内で始めた。18年2月末までに1000カ所の設置を目指す。

 現金ではなく「suica(スイカ)」などの交通系電子マネーで決済する。ナッツや機能性チョコレートなどの健康系商品が人気だという。

 コンビニ各社はおにぎりや弁当など中食の品質や販売を強化している。小売りの実店舗がネットに押されている背景の一つに、接客を好まない人の存在もある。

 自販機の長所は会話をせず、ほしい商品を短時間で買うことができる点。店舗とともに、自販機の設置場所開拓でも各社の競争が激化しそうだ。
ローソンはセルフレジを利用した「プチローソン」の展開を始めた

(文=嶋田歩、江上佑美子)

日刊工業新聞2017年10月2日「深層断面」

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川上景一
JEITA
常務理事

 自販機がIoTのノードとなる可能性を感じる記事だ。IoTが進むということは、家の中と外のサイバー空間がつながるということでもある。自販機が「モノを販売する機械」から、他の自販機やセンサー、スマホとつながって「サービスを提供する端末」になると、家という物理空間の外に「スマートホーム」が広がり、暮らしが変わっていく。「高齢者見守り/スマホとコラボ」の実証実験がスタートしているのは、このような可能性を探る取り組みと考えることができる。異業種間でのオープンイノベーションが不可欠だ。  CEATEC JAPAN 2017では、主催者特別企画展示「IoTタウン」をはじめとして、スマートホームに関する展示やコンファレンスが多数ある。ビジネスパートナーを見出す場としても活用頂き、プラットフォームを作って、その上に多様なサービス提供者が集うことにより、少子・高齢化が進む中で、IoTを、豊かで、幸せな生活を実現するために活かしていきたい。

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