「霧ケ峰」を若者に知ってもらいたい。三菱電機が一新したブランド戦略とは?
「ストーリー性」重視、SNS動画は公開1カ月で600万回再生
三菱電機は20―30代の若年層向けブランド戦略を一新し営業攻勢をかけている。テレビ離れや消費離れが進む若年層には、製品性能を単純に訴求するブランド戦略は通用しにくくなっている。そこで同社は主力の製品ブランドを基にストーリー性の高い動画を制作。会員制交流サイト(SNS)や動画投稿サイトを活用し、従来の宣伝とは異なる方法でアプローチする。
「大人になった気分をくれた夜風」―。三菱電機のエアコン「霧ケ峰シリーズ」の動画は、人生を歩んでいる中で出会う“風”をテーマにした。動画投稿サイト「ユーチューブ」などで公開する。
同シリーズの最新機種は人工知能(AI)や体感温度の予測機能を搭載しているが、動画ではそうした性能の紹介をしていない。製品の登場も動画が終わる最後の数秒間のみという斬新(ざんしん)な手法を採用した。同社宣伝部の桑畑一浩メディア・ドキュメントグループマネージャーは「若年層向けに『霧ケ峰ブランド』を伝えるのが第一歩」と訴える。
霧ケ峰シリーズの主な購買層は40代であり、40代未満の消費者にはブランドの認知が進んでいないという。背景には、若年層のテレビ離れなどに伴い、従来の宣伝では伝わりづらいという課題がある。特に働き盛りの30代は多忙なため、テレビCMを見たり、家電量販店に出向いたりして情報を得る機会が少ない。
電通メディアイノベーションラボの天野彬副主任研究員は「2000年前後に社会人となった“ミレニアル世代”は、インターネットを利用した消費活動が中心だ」と説明する。特に近年は、ツイッターやフェイスブックなどのSNS、ユーチューブを通じた情報収集が活発化している。SNSが持つ拡散性を利用し、消費者との接点を増やせるかが20―30代への宣伝においてカギを握る。
ただネットなどで爆発的に拡散されるためには、注目される仕掛けが必要だ。天野研究員は「コメント欄など(消費者と)コミュニケーションを生む環境や、共感性の高い動画が求められる」と指摘する。三菱電機は今回、動画をフェイスブック上で紹介しており、30代からのコメントは旺盛という。
さらに動画に映らない細部の設定にもこだわった。宣伝部の西上左近BtoCコミュニケーショングループ担当者は「シーンの前後の設定を作ることで、ストーリーに深みが増した」と強調する。動画の魅力が若年層を中心に伝わり、8月下旬の公開から約1カ月で再生回数は600万回を突破した。
同社は「動画の宣伝に関しては電機業界の中で後れを取っていた」(桒原幸志BtoCコミュニケーショングループマネージャー)と打ち明ける。そこで従来のブランドイメージを維持しつつ、新たな世代にどう訴えるかを模索した。16年に動画の宣伝サイトを立ち上げ、製品紹介ではなく生活情報に焦点を当てて発信。その後も動画の試作を繰り返し、満を持して霧ケ峰シリーズの動画を制作した。今後は他の家電製品も若年層向けに効果的なブランド戦略を展開する。
(文=渡辺光太)
「大人になった気分をくれた夜風」―。三菱電機のエアコン「霧ケ峰シリーズ」の動画は、人生を歩んでいる中で出会う“風”をテーマにした。動画投稿サイト「ユーチューブ」などで公開する。
同シリーズの最新機種は人工知能(AI)や体感温度の予測機能を搭載しているが、動画ではそうした性能の紹介をしていない。製品の登場も動画が終わる最後の数秒間のみという斬新(ざんしん)な手法を採用した。同社宣伝部の桑畑一浩メディア・ドキュメントグループマネージャーは「若年層向けに『霧ケ峰ブランド』を伝えるのが第一歩」と訴える。
霧ケ峰シリーズの主な購買層は40代であり、40代未満の消費者にはブランドの認知が進んでいないという。背景には、若年層のテレビ離れなどに伴い、従来の宣伝では伝わりづらいという課題がある。特に働き盛りの30代は多忙なため、テレビCMを見たり、家電量販店に出向いたりして情報を得る機会が少ない。
電通メディアイノベーションラボの天野彬副主任研究員は「2000年前後に社会人となった“ミレニアル世代”は、インターネットを利用した消費活動が中心だ」と説明する。特に近年は、ツイッターやフェイスブックなどのSNS、ユーチューブを通じた情報収集が活発化している。SNSが持つ拡散性を利用し、消費者との接点を増やせるかが20―30代への宣伝においてカギを握る。
ただネットなどで爆発的に拡散されるためには、注目される仕掛けが必要だ。天野研究員は「コメント欄など(消費者と)コミュニケーションを生む環境や、共感性の高い動画が求められる」と指摘する。三菱電機は今回、動画をフェイスブック上で紹介しており、30代からのコメントは旺盛という。
さらに動画に映らない細部の設定にもこだわった。宣伝部の西上左近BtoCコミュニケーショングループ担当者は「シーンの前後の設定を作ることで、ストーリーに深みが増した」と強調する。動画の魅力が若年層を中心に伝わり、8月下旬の公開から約1カ月で再生回数は600万回を突破した。
同社は「動画の宣伝に関しては電機業界の中で後れを取っていた」(桒原幸志BtoCコミュニケーショングループマネージャー)と打ち明ける。そこで従来のブランドイメージを維持しつつ、新たな世代にどう訴えるかを模索した。16年に動画の宣伝サイトを立ち上げ、製品紹介ではなく生活情報に焦点を当てて発信。その後も動画の試作を繰り返し、満を持して霧ケ峰シリーズの動画を制作した。今後は他の家電製品も若年層向けに効果的なブランド戦略を展開する。
(文=渡辺光太)
日刊工業新聞2017年10月6日