「天井」を制する者がIoTを制す? 照明・空調メーカーが狙うセンサーの一等地

“センサーの位置取り”が企業競争力に直結

  • 1
  • 31
天井に設置されている空調や照明は、センサーとしても一等地を占めている
 「家庭の電力消費を人工知能(AI)などで分析すれば、生活様式が見えてくる」。パナソニックのエナジーシステム事業部新事業推進センターの磯崎典夫所長はこう明かす。

 21時にいったん消灯し再び深夜に点灯する世帯は、早い時間に寝かしつける小さな子どもがいる育児中の家庭だと推測できる。半年後、平日昼間の消費電力が大きく下がれば、母親が職場復帰して不在になったとも判断できる。個人情報に触れるため、データの扱いには慎重さが求められるが、生活の変化に適したリフォーム提案などに生かせる。

 センシングの技術は健康管理にも役立つ。同社は京都大学と協力し、空調や照明に組み込める小型の非接触式心拍センサーを開発した。心拍からストレス度合いを推測でき、ベッドからの転落も分かる。京大の佐藤亨教授は「センサーが照明器具に入ればリビング、廊下、風呂場、寝室など家のどこでも追跡できる」と解説する。

 三菱電機照明(神奈川県鎌倉市)の阿部正治社長も「社会のあらゆる所に存在する照明がセンサーも兼ねれば、人の動きや密度が分かる」と考える。人感センサーを不在時の消灯以外にも広く応用できないか、検討しているという。

一等地に機器を置く


 空調や照明は空気や光を室内全体に供給したり照射したりする役割を担う。このため、図らずもセンサーの位置として一等地を占める。空調と照明の双方を手がけるパナソニックの宮部義幸専務執行役員は、こうした実情を踏まえ「IoT(モノのインターネット)の“T”(機器)を持っていること」を今後の強みに挙げる。一等地に機器を置く企業がデータを占有するかもしれない。

 もちろん、こうした考えを持つのは日本企業に限らない。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は祖業である照明にセンサーを搭載し、駐車場の空車や道路の渋滞、大気汚染の情報を提供する「インテリジェント照明」を開発中だ。米グーグルも2014年に住宅用エネルギー管理機器を手がける米ネストを買収し、現実社会のデータ分析にも食指を動かす。

 ダイキン工業もこうした海外勢の動きを注視する。「世界一の空調稼働データを持つ」(十河政則社長)という強みがある一方、データを事業に活用できなければ従来型ビジネスから脱却できず、競争力を失う恐れがある。7月にはIoTとAIで事業変革を進めるため「テクノロジー・イノベーションセンター」を改変した。都島良久副センター長は「データの価値を全社に浸透させる」と意気込む。

 データが価値を生む社会では“センサーの位置取り”が企業競争力に直結する。日本企業が位置の優位性を生かせるかどうかは、機器売りだけにとらわれず、データから新たな価値を実現できるかにかかっている。照明と空調の新たな可能性がそこにある。
(大阪・平岡乾)

日刊工業新聞2017年9月29日

COMMENT

八子知礼
INDUSTRIAL-X
代表

 天井に備え付けられている照明と空調は、オフィス空間においてIoTビジネスで最も条件の良いところを占有している。かつて自分が在籍した松下電工時代にも天井活用やそれを通じたネットワーク配線を提案していたものだが時期尚早だった。今であれば様々なモノやコトが繋げられる環境とニーズが存在する。社員の在室管理やモノの所在管理などは最たるニーズで昨今の働き方改革の流れに合致した引き合いが後を絶たない。先んじたものが天井も制す。

関連する記事はこちら

特集