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IoT・AIで人の集中力を向上させる空間づくりが進む

空調や照明、新たな価値創出なるか
IoT・AIで人の集中力を向上させる空間づくりが進む

IoTやAIの登場により、第4次の技術革新が進む空調(左)と照明(いずれもパナソニック製)

 空調や照明にIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を取り入れ、人の集中力や安全性の向上に役立てようとする動きが始まった。省エネルギーや空気・光の質の改善など既存の機能に加え、第4次の技術革新とも言える“空調/照明4・0”として新たな価値創出に期待がかかる。実現には異業種が連携するオープンイノベーションや、売り切りビジネスからの脱却に取り組み、ビジネスモデルを再構築する必要がある。

究極の目標


 「省エネや環境、安全性などは当たり前。活気あるオフィスや、睡眠が深くなる寝室などの実現が究極の目標だ」。ダイキン工業の十河政則社長は、空調技術の展望をこう語る。また、完全自動運転が普及するころには「車載エアコンには仮眠環境を整える機能が求められるかもしれない」と指摘する。こうした未来予想図の下、自社のオフィスフロアを使い、温湿度と生産性との関連性を調べる活動を始めた。

眠気進行防ぐ


 一方、パナソニックはカメラやエアコンを用い、運転手の眠気進行を未然に防ぐ自動車向けシステムを試作した。運転手の表情や周囲の明るさから眠くなる兆候をつかみ、エアコンで車内温度を下げるなどして眠気を抑える。センシングソリューション開発センターの楠亀弘一氏は「運転支援システムに需要があるかもしれない」とみる。自動運転化が進むと、運転手は緊張感がなくなり、眠くなる懸念があるからだ。このほかオフィスや学校での利用も模索する。

質の向上寄与


 19世紀前後、圧縮式冷凍機やガス灯が普及し始め「冷やす」「照らす」という機能の恩恵を享受できるようになった。今では快適な室温になるよう運転を調整するインバーター制御のエアコンや、発光ダイオード(LED)照明といった省エネ性能の優れた機器が登場。部屋の場所によって生じる温度ムラを抑えるエアコンや、物の見栄えを良くする照明など、質の向上にも寄与し始めている。

 こうした技術の進歩を第1―3次の革新とすれば、IoTやAIを使う技術は第4次革新に当たる。

 生産性や安全性の向上など、従来の空調や照明の延長線上にはない価値が加わる可能性が高い。

 日本の空調・照明市場は成熟化しており、大きな伸びは期待できない。業界団体の空調需要予測によると、2016―18年度の平均年間成長率は家庭用が1・0%、業務用は0・4%という。またLED照明も蛍光灯からの置き換え需要はあるが、安価な海外品との競争もあって単価下落が止まらない。こうした市場環境を打破するには、IoTやAIを使った新しい価値が求められる。
  
日刊工業新聞2017年9月27日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
長時間過ごすオフィス。暑すぎたり、寒すぎたり、照明が目に悪いなどの要因はじわじわと健康を害しストレスにもなりかねません。新しいオフィスだけでなく、既存のオフィスにも導入できるようなシステムがあれば普及が一層進みそうです。

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