なぜ日産は回転寿司をマーケティングに使うのか
自動運転「プロパイロット」の技術を分かりやすく訴求
日産自動車がデジタルマーケティングの活動領域を広げている。2015年から会員制交流サイト(SNS)を活用して、自社のイメージ向上や新技術の紹介を目的とした動画配信やキャンペーンを開始した。自動車に関心の低い人々との接点をつくり、日産をより身近に感じてもらうことで潜在顧客の獲得につなげる。
店内が満席となった飲食店の外に、ぎっしりと並べられた空席待ち用いす。最前列のいすから人が離れると、いすが最後列に移動し、2番目以降のいすが人を乗せたまま前に詰めていく。いすはすべて自動で動くため、行列待ちのストレス軽減につながる。
「プロパイロットチェア」と題したこの動画は、日産が動画投稿サイト「ユーチューブ」や個人向けSNS「フェイスブック」を通じて配信している。同社の同一車線自動運転技術「プロパイロット」の利便性や快適さを分かりやすく伝えるため、同技術を生活に身近な場面に置き換える形で制作した。
そのほか、同社の自動駐車技術をオフィス用いすで再現した動画なども配信。ブランド&メディア戦略部主担の石黒英介氏は「車に興味のない人に技術の良さや利点を伝え、日産を好きになっていただくことがゴール」と、取り組みの狙いを説明する。
日本の自動車販売市場は、人口減少や若者の車離れを背景に成長は見込みにくく、今後の車メーカー同士の競争激化が予想される。
また日産独自の調査によると、車を購入する人の中で日産車を検討する比率が低いことが判明。そのため、「我々が普段接していない人々に情報をどう届けて、振り向いてもらうか」(石黒主担)がマーケティング面での課題となっていた。
そこで、人々のエンゲージメント率(つながり度)が高く、同社が届かない人々にも情報が拡散しやすいSNSの活用を決定。15年にフェイスブックなどを通じて、冬場の車発進時に起こり得る猫の巻き込み事故を防ぐための活動を提唱した。
また、夏の子どもやペットの車内放置事故防止を推進する動画も制作。これらの活動を通じて、まずは同社が世の中の課題解決に取り組んでいる点を訴求することで、“日産ファン”を増やす狙いだ。
活動の反響は徐々に高まっていった。猫の事故防止に向けた推進活動では専用ステッカーを作成。販売店からステッカー送付の要求が相次いだほか、顧客から「テレビで宣伝すべきだ」との声も聞かれるなど「ポジティブな成果を得られている」(同)という。
(文=土井俊)
店内が満席となった飲食店の外に、ぎっしりと並べられた空席待ち用いす。最前列のいすから人が離れると、いすが最後列に移動し、2番目以降のいすが人を乗せたまま前に詰めていく。いすはすべて自動で動くため、行列待ちのストレス軽減につながる。
「プロパイロットチェア」と題したこの動画は、日産が動画投稿サイト「ユーチューブ」や個人向けSNS「フェイスブック」を通じて配信している。同社の同一車線自動運転技術「プロパイロット」の利便性や快適さを分かりやすく伝えるため、同技術を生活に身近な場面に置き換える形で制作した。
そのほか、同社の自動駐車技術をオフィス用いすで再現した動画なども配信。ブランド&メディア戦略部主担の石黒英介氏は「車に興味のない人に技術の良さや利点を伝え、日産を好きになっていただくことがゴール」と、取り組みの狙いを説明する。
日本の自動車販売市場は、人口減少や若者の車離れを背景に成長は見込みにくく、今後の車メーカー同士の競争激化が予想される。
また日産独自の調査によると、車を購入する人の中で日産車を検討する比率が低いことが判明。そのため、「我々が普段接していない人々に情報をどう届けて、振り向いてもらうか」(石黒主担)がマーケティング面での課題となっていた。
そこで、人々のエンゲージメント率(つながり度)が高く、同社が届かない人々にも情報が拡散しやすいSNSの活用を決定。15年にフェイスブックなどを通じて、冬場の車発進時に起こり得る猫の巻き込み事故を防ぐための活動を提唱した。
また、夏の子どもやペットの車内放置事故防止を推進する動画も制作。これらの活動を通じて、まずは同社が世の中の課題解決に取り組んでいる点を訴求することで、“日産ファン”を増やす狙いだ。
活動の反響は徐々に高まっていった。猫の事故防止に向けた推進活動では専用ステッカーを作成。販売店からステッカー送付の要求が相次いだほか、顧客から「テレビで宣伝すべきだ」との声も聞かれるなど「ポジティブな成果を得られている」(同)という。
(文=土井俊)
日刊工業新聞2017年9月1日