日産・セレナが普及価格帯でも自動運転機能を搭載できたコスト削減手法とは

予約時点でプロパイロットを選択した比率は7割。多い?それでも少ない?

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**車両開発責任者・磯部博樹氏
第二製品開発部第三プロジェクト統括グループ

 自動運転技術「プロパイロット」を搭載すると決まったのはコンセプト作りに着手してから間もなくの2013年秋から冬にかけて。コストがかさむ新技術を搭載するところで、価格帯を前モデルから据え置く目標は変えられなかったからコスト減に苦労した。

 日産は、モジュール化によって開発や調達コストを大幅に減らす新設計手法「コモンモジュールファミリー(CMF)」の適用車種を拡大しているが、セレナはその対象外だ。

 それでもステアリングなどCMFで採用されたモジュールを流用し、CMFの規模のメリットをできるだけ生かした。プラットフォーム(車台)は前モデルを流用した。形は同じでも板厚を下げるなどの改良も施した。

 前モデルは最近まで日産自動車九州(福岡県苅田町)で作っていたが、その前は日産車体(神奈川県平塚市)で作っていた。このため神奈川から九州に納めていた部品が結構あって物流コストがかさんでいた。今回の全面改良にあたり九州地場のサプライヤーからの調達を増やし物流コストを浮かした。

 プロパイロットのシステムも単眼カメラと画像処理ソフトというシンプルな構成なので、カメラを複数使ったり、レーダーを使ったりするよりコストを抑えられている。

 プロパイロットは安全に関わる重要な新技術だ。信頼性を上げるために主要な国内の高速道路はすべて走った。誤認識が起こる場所があったらソフトを改良してまた現場に行って試すということを繰り返した。

 先行車両を検出していることや、ステアリング制御が作動していることなどシステムが今どういう状態になっているかを運転者にわかりやすく伝えるインターフェースにするようにも気を配った。

 車に触れずに開閉できるスライドドアを世界で初めて搭載するなど使い勝手の良さにもこだわった。1991年の初代から家族の楽しみを追求してきた。今回は登り棒や滑り台などが合わさった複合的でカラフルな遊具をイメージした。大人でもわくわくする要素をたくさん詰め込んでさらに進化を遂げた。

(磯部氏)

 【記者の目・主力車種で国内販売立て直し】
 目玉はプロパイロットだろう。同様の機能は高級車で市販されているが、普及価格帯では業界初といい、自動運転に一歩近づく高度な技術が一般消費者にどう受け止められるか業界での注目度は高い。一方セレナは日産の登録車の中で販売規模は3本の指に入る主力車種。長期低迷する日産の国内販売の立て直しにつながるかという点でも注目だ。
(文=池田勝敏)

<仕様>
セレナ ハイウェイスター プロパイロットエディション(2WD)
全長×全幅×全高=4770×1740×1865㎜
車両重量=1680㎏
乗車定員=8人
エンジン=DOHC筒内直接燃料噴射直列4気筒「MR20DD」
総排気量=1.997ℓ
モーター=交流同期発電機「SM24」
最高出力=エンジン150馬力、モーター2.6馬力
変速機=エクストロニックCVT(無段変速機)
JC08モード燃費=1ℓ当たり16.6キロメートル
価格=291万6000円(消費税込み)

記者ファシリテーターの見方


 日産によると先月発売時点の予約注文でプロパイロットを選択した比率は7割。この水準は高いよう見えるが、3割が選択してないと考えると、プロパイロットのオプション料を払ってでも自動運転技術を使いたいという客層がそんなにいないこともうかがえる。
(日刊工業新聞第一産業部・池田勝敏)

日刊工業新聞2016年9月14日

COMMENT

中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ
代表

発売直後のリコール発覚で出鼻をくじかれはしたが、日産の主力モデルとして今後も力強い販売のけん引役となるだろう。注目していたのが「プロパイロット」の価格設定であった。オプション差があるたんめ、厳密な価格設定を知ることはできないが、291万円の「ハイウェイスタープロパイロットエディション」が 291.6万円から推察すれば、「プロパイロット」の価格設定はざとした推定で15万円から17万円だろうか。それなりのメーカー側のマークアップと小売り価格転嫁が実現できているようだ。ただ、「自動運転」でユーザーの利便性向上を謳えば転嫁が容易になり、「運針支援」として安全性を主眼に置くと訴求しづらいという、現在の自動運転ブームにメーカーもユーザーも踊らされ過ぎては問題がある。理解を深めないと、大事故にもつながりかねない。

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