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電車でトイレに行きたくなっても大丈夫!IoTで空室管理

KDDIのスマートトイレ 「駅」で積極導入
電車でトイレに行きたくなっても大丈夫!IoTで空室管理

壁に設置したセンサー(手前左上)で扉の開閉状況を検知し、トイレの満・空室情報を配信する(KDDI提供)

 センサーなどを活用しトイレの水量や空室を管理するKDDIのIoT(モノのインターネット)サービスが、担当者も想定外の反響を見せている。水道費を削減できる節水管理と、満・空室情報を遠隔で確認できる空室管理の二つのサービスを投入し、このうち節水管理を主力と見込んでいた。だが空室管理にそれを上回る需要が集まり、駅などで導入が進んでいる。定量的な導入効果を示しにくい空室管理に需要が集まった背景には、IoTサービスを展開する上で重要なポイントがある。

 スマートフォンの「小田急アプリ」を開くと小田急電鉄「新宿駅」の構内図が閲覧できる。西口と南口の離れた2カ所にあるトイレは満・空室情報が表示され、スマホで空室がある方を確認した上でトイレを利用できる。利用客の満足度を高めるちょっとした機能だ。

 この機能の導入背景について小田急電鉄IT推進部の山田聖課長代理は「小田急沿線の暮らしやすさを向上するIT活用の一環。利用客の立場で考えた時、通勤時などに電車内で駅のトイレの空室情報を確認できる仕組みは助かるだろうと思って企画した」と説明する。企画に合致するシステムをKDDIに相談した結果、同社の空室管理サービスの提案を受けて導入が決まった。

 提供開始から約3カ月。会員制交流サイト(SNS)などでの利用客の反響は上々という。今後もそうした反響を注視しつつ、導入駅を拡大する方向で検討する。将来は全駅に導入し、電車乗車中にトイレに行きたくなった利用客が空室のある駅をアプリで確認し、降車するなどの使われ方を構想している。

 KDDIがトイレ空室管理サービスの提供を開始したのは2017年春。当初は同時に提供を始めた節水管理サービスが受注の9割を占めると想定していた。節水管理は、4―5割の水道代削減効果を見込める。このため顧客満足度の向上という定性的な効果しか示せない空室管理に比べ、提案しやすく導入が進むと見通していた。

 それが一転、受注件数は空室管理が半数以上になったという。駅のほか、事務所や商業施設で導入が進んでいる。KDDIビジネスIoT推進本部の原田圭悟ビジネスIoT企画部長は「想定外の状況」と驚く。その上で「コスト削減効果などが示せるサービスは顧客に提案しやすい。ただ(IoTサービスを展開する上では)それ以上に一般消費者の『悩みの種』を見極める重要性を感じた」と続ける。

 KDDIは法人向け汎用IoTサービスの開発に注力しているものの、トイレ管理サービス以来、新商品は提供できていない。消費者の「悩みの種」という事業機会をいかに見つけ出せるか、今後のIoT事業拡大のカギになりそうだ。
(文=葭本隆太)

日刊工業新聞2017年9月5日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
文中のコメント "一般消費者の『悩みの種』を見極める重要性を感じた" がポイント。IoTビジネスの本質は繋がっていない/見えていないところを繋ぐ/見える化することによる課題解決。コスト削減や生産性向上を掲げる企業もあるが、縮小均衡にしかならずネットワークにつなげる効果がスケールしない。トイレの空室管理は駅のほか、オフィスビルでも公共スペースでも引き合いの強いソリューション。

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