ベールを脱いだ三菱自の戦略車、新型MPV「エクスパンダー」
インドネシアの新工場で生産、周辺国に輸出も
三菱自動車は開催中のインドネシア国際オートショーで、3列シートの新型多目的車(MPV)「エクスパンダー」を世界初公開した。MPVの持つ居住性やスポーツ多目的車(SUV)のデザイン性を融合させることで、さまざまな路面状況での優れた乗り心地と快適な居住空間を実現した。
インドネシア西ジャワ州の新工場で年間8万台を生産し、同国で今秋発売する。東南アジアなど一部地域にも、2018年初春から出荷する計画。
前面中央のラジエーターグリルは、バンパーの左右コーナー部、アンダーガードの3方向から包み込むような形状とした。ボディーサイズを従来の小型MPVより一回り大きくし、室内空間と多人数乗車に適したレイアウトを実現。また高剛性ボディーと、最適化したサスペンションの採用により、高い操縦安定性と快適な乗り心地を両立させた。
所得の向上に伴い、東南アジア諸国連合(ASEAN)は有力な新車販売市場に育ちつつある。2016年の主要7カ国の販売台数は316万台。約500万台の日本には及ばないが、インド(366万台)と並ぶ。
自動車生産ではタイ、インドネシア、マレーシアが先行している。それぞれ16年に194万台、117万台、54万台を生産。将来、この“先頭集団”に追いつけそうなASEANの国はどこか―。
可能性がありそうなのが、人口1億人のフィリピンと9000万人のベトナムだ。両国の生産規模は10万―20万台程度だが、国際通貨基金によると16年の1人当たりの国内総生産(GDP)は、フィリピンが約2900ドル(32万円)、ベトナムが約2100ドル(23万円)。自動車が売れ始める3000ドル(33万円)に近づきつつある。
まず動き出したのはフィリピン政府だ。15年に自動車産業育成策「CARS(カーズ)」を発表。6年間で20万台を生産することを条件に、1車種につき約90億ペソ(約200億円)の補助金を完成車メーカーに支給する。
現地でシェア39%と首位のトヨタ自動車と、同15%で2位の三菱自動車が申請し承認された。三菱自と現地で合弁を組む双日の増田純也フィリピン事業専門部長は「政府の自動車育成策は10年来の悲願。今後は現地の産業育成にも貢献したい」と意気込む。
一方、ベトナムは宙ぶらりんの状況が続く。ベトナムはミャンマーなどとともにASEAN経済共同体(AEC)で約束した関税撤廃の時期を18年にひかえ、あと残り半年足らずでタイなどからの完成車の輸入が無税で入ってくる状況にもかかわらず、輸入に頼るのか、自国内で自動車産業を育成するのか「政府は明確に決めずにいる」(窪田光純ベトナム経済研究所会長)。
トヨタはタイで年間50万台以上の車両を生産しているが、ベトナムでは同5万台規模にとどまる。経済合理性を考えると、ベトナムでの車両生産から撤退し、タイからの輸入に切り替える方が得策だ。ただトヨタは「競争力を強化するために何ができるか考える」(幹部)と撤退には慎重な姿勢を崩さない。
東南アジアではタイ政府の税制優遇もありトヨタはタイでハイブリッド車(HV)の大幅増産を計画するなどタイ工場の存在感が一段と高まる。
産業基盤が厚い自動車産業は、経済発展のカギ。電気自動車(EV)や自動運転の台頭といった自動車業界の変化の潮流をにらみつつ、自国でどう振興していくかが各国の成長を左右する。
インドネシア西ジャワ州の新工場で年間8万台を生産し、同国で今秋発売する。東南アジアなど一部地域にも、2018年初春から出荷する計画。
前面中央のラジエーターグリルは、バンパーの左右コーナー部、アンダーガードの3方向から包み込むような形状とした。ボディーサイズを従来の小型MPVより一回り大きくし、室内空間と多人数乗車に適したレイアウトを実現。また高剛性ボディーと、最適化したサスペンションの採用により、高い操縦安定性と快適な乗り心地を両立させた。
東南アジア、期待のフィリピンとベトナムで明暗
所得の向上に伴い、東南アジア諸国連合(ASEAN)は有力な新車販売市場に育ちつつある。2016年の主要7カ国の販売台数は316万台。約500万台の日本には及ばないが、インド(366万台)と並ぶ。
自動車生産ではタイ、インドネシア、マレーシアが先行している。それぞれ16年に194万台、117万台、54万台を生産。将来、この“先頭集団”に追いつけそうなASEANの国はどこか―。
可能性がありそうなのが、人口1億人のフィリピンと9000万人のベトナムだ。両国の生産規模は10万―20万台程度だが、国際通貨基金によると16年の1人当たりの国内総生産(GDP)は、フィリピンが約2900ドル(32万円)、ベトナムが約2100ドル(23万円)。自動車が売れ始める3000ドル(33万円)に近づきつつある。
まず動き出したのはフィリピン政府だ。15年に自動車産業育成策「CARS(カーズ)」を発表。6年間で20万台を生産することを条件に、1車種につき約90億ペソ(約200億円)の補助金を完成車メーカーに支給する。
現地でシェア39%と首位のトヨタ自動車と、同15%で2位の三菱自動車が申請し承認された。三菱自と現地で合弁を組む双日の増田純也フィリピン事業専門部長は「政府の自動車育成策は10年来の悲願。今後は現地の産業育成にも貢献したい」と意気込む。
一方、ベトナムは宙ぶらりんの状況が続く。ベトナムはミャンマーなどとともにASEAN経済共同体(AEC)で約束した関税撤廃の時期を18年にひかえ、あと残り半年足らずでタイなどからの完成車の輸入が無税で入ってくる状況にもかかわらず、輸入に頼るのか、自国内で自動車産業を育成するのか「政府は明確に決めずにいる」(窪田光純ベトナム経済研究所会長)。
トヨタはタイで年間50万台以上の車両を生産しているが、ベトナムでは同5万台規模にとどまる。経済合理性を考えると、ベトナムでの車両生産から撤退し、タイからの輸入に切り替える方が得策だ。ただトヨタは「競争力を強化するために何ができるか考える」(幹部)と撤退には慎重な姿勢を崩さない。
東南アジアではタイ政府の税制優遇もありトヨタはタイでハイブリッド車(HV)の大幅増産を計画するなどタイ工場の存在感が一段と高まる。
産業基盤が厚い自動車産業は、経済発展のカギ。電気自動車(EV)や自動運転の台頭といった自動車業界の変化の潮流をにらみつつ、自国でどう振興していくかが各国の成長を左右する。
日刊工業新聞2017年8月10日/15日