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三菱自動車が好調「アウトランダーPHEV」を大幅改良に踏み切ったワケ

欧州メーカーがPHEVで攻勢。「他社とは全く違う乗り味」-昨年就任の相川社長初の新車
三菱自動車が好調「アウトランダーPHEV」を大幅改良に踏み切ったワケ

新型アウトランダーPHEV

三菱自動車の相川哲郎社長は7月に発売するプラグインハイブリッド車(PHV)の新型「アウトランダーPHEV」発表の席で、「ブランド復活の第一歩」と熱く語った。同車は三菱自が注力する「電動車」と「スポーツ多目的車(SUV)」の両要素を表した車。就任丸1年となる相川社長にとって就任後初の国内の新型車でもある。昨年から欧州勢が相次ぎPHVを発売する中、電動車でリードを続けるため新型車で正念場に挑む。

 アウトランダーPHEVは2013年1月に発売し、累計販売6万4000台の世界で最も売れているPHVだ。約2年半の短期間でコストをかけて大幅改良に踏み切った理由は二つある。一つは購入者の約3割が欧州高級車から乗り換えだということ。もうひとつは「欧州車メーカーが続々とPHVを発売する」(相川社長)ことだ。

 日本でPHVといえば同車やトヨタ自動車「プリウスPHV」だが、昨年から欧米メーカーが相次ぎPHVを発売し、市場が活性化しつつある。例えば、独BMWは炭素繊維を採用した高級スポーツカー「i8」を発売、独フォルクスワーゲンは主力車「ゴルフ」にPHVを設定、伊ランボルギーニや独ポルシェも投入し、一気に車種の幅が広がった。富士経済の市場予測によると、2030年のPHV市場は13年比33・8倍の304万台に拡大するという。643万台を見込むハイブリッド車(HV)市場に対して、半分近くに迫る。

 世界各国の燃費規制強化の動きが各社のPHV拡大を後押しする。欧州では21年に1キロメートル走行で排出する二酸化炭素(CO2)を95グラムに減らす必要があり、中国でも20年には欧米と同等の環境規制が導入される。

 競合にPHVかつSUVの車は少ないが、逆に言えばスポーツカータイプのPHVと、現在の独アウディやBMWなどのSUVの両方に対抗しなければならない。そこでフロントデザインの一新や内装の追加に加え、高級車の特徴である静粛性を高めるため30もの部品を変更した。また電気自動車(EV)から発展して開発したため、「他社のPHVとは全く違う乗り味。新しい車と比較しても大きな特徴になる」(同社担当者)。

 電動車の販売が多いのは欧州と日本だが、20年頃までの燃費規制の動向を見ると今後は米国と中国で電動車の販売を増やさなければならない。そこで現在アウトランダーPHEVを販売していない米国で「来春の発売を目指す」(相川社長)。中国は「他社に遅れず(電動車を)展開したい」(同)と話し、現地で実証実験を行いながら機会をうかがう。

 同車から採用した新フロントデザインは軽自動車を含めた今後の新型車に採用され、まさに新しい三菱自の顔となる。電池の品質問題といった厳しさも乗り越え、次の飛躍に向け先頭に立つ。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2015年06月25日 自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
マツダや富士重など中堅メーカー2社の販売が絶好調なのに対し、三菱自は波に乗り切れていない。技術的なブランディング力の差もその一つだろう。アウトランダーPHEVを同社の本当のフラッグシップに育てることができるか。この一年が分かれ目になる。

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