地方の事例に見る、「SIB」のメリットの数々

滋賀県東近江市が事業を展開

空き倉庫を改修したカフェ。市民が出資して事業を支援

 「地元の木材でオモチャを作りたい」。若者の話を聞いた高齢者が「これじゃだめだ」「こうしないと」と次々と言い始めた。滋賀県東近江市で2016年に開かれたソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)事業説明会でのやりとりだ。若者は事業に必要な資金支援を市民に求めた。  同市森と水政策課の山口美知子課長補佐は「孫にオモチャを買うのは私たち。だから私たちが買いたいと思う商品にしてほしかった」と高齢者の思いを代弁する。高齢者は出資者であると同時に、孫にオモチャをプレゼントするおじいちゃん、おばあちゃんでもある。若者は説明会で“生のニーズ”を聞き、商品に磨きをかけた。いま、若者の会社が製作する積み木は海外でも話題となるなど、事業は軌道に乗った。  SIBは企業や個人から集めた資金を活用し、公的サービスを提供する事業者を支援する仕組みだ。英国発の金融手法で、日本でも普及が期待されている。16年度に始まった東近江市版SIB事業は、地域課題の解決につながる事業を市民の資金で後押しする。まき割り作業による引きこもり者の就労支援、地域のお茶のブランド化、空き倉庫を改修したカフェの開業など13件の支援実績がある。  持続可能な開発目標(SDGs)が登場し、企業には社会課題解決型ビジネスが求められている。しかし企業が課題解決事業に進出するにはリスクがある。そこで少額であっても起業や事業化を後押しするのが同市のSIB事業だ。「小商い(わずかな元手で細々と営む商売)でも、地方にはありがたい」(山口課長補佐)と語る。地域には課題が山積し、行政だけでは解決が限界となっているからだ。  SIBだと市民も自分のお金がどのように貢献したのか分かりやすい。それに商品の購入やカフェの利用で直接、支援先を応援できる。SIB事業の事務局である「東近江三方よし基金」は市の発案で設立したが、基本財源も市民の寄付金で成り立っている。  もともとは市の環境政策の議論から基金やSIBが生まれた。市長が「環境だけでいいのか」と指示したのがきっかけだ。環境対策だけ進んでも、経済が疲弊すると地域社会は衰退する。「経済、社会、環境を分けない考え方はSDGsと一緒だった」(山口課長補佐)と振り返る。SDGsは理念に「経済、社会、環境の統合」を掲げる。行政が地域課題解決に民間活力を生かすヒントでもある。

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