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“たらこ先生”が教える地場産業、モノづくり体験で石巻を元気に

企業体験型プログラム「ISHINOMAKIDS TRY」
“たらこ先生”が教える地場産業、モノづくり体験で石巻を元気に

湊水産の木村社長が、スケトウダラをさばいてたらこを取り出す

 まなびのたねネットワーク(仙台市青葉区、伊勢みゆき代表理事)は、宮城県石巻市で子どもたちの企業体験型プログラム「ISHINOMAKIDS TRY」プロジェクトを企画している。キャリア教育の一環として早期にモノづくりを体験させることで地元への愛着心を育み、地場企業への就職などにもつなげたい考えだ。

 石巻市立開北小学校の5年生の生徒たちが同プロジェクトの水産加工プログラムに参加した。事前学習で地元の基幹産業である水産業について学んだ後、湊水産(同市)の食育体験企画「たらこ、つくろう。」を体験。同社は、同団体と連携して2015年ごろから地元の小学生たちを受け入れている。

 生徒たちは工場見学や企業紹介を受けた後、たらこ作りの講習を受け、たらこの漬け込みに挑戦した。木村一成社長が扮(ふん)する「たらこ先生」が、原料のスケトウダラをさばくシーンでは大きな歓声も上がった。

 メスシリンダーや計測器などを使って、塩やグルタミン酸ナトリウムなどを計量、調味液を作製した。袋にたらこと液を入れて漬け込み。自宅に持ち帰って1日数回「手返し」をして液を浸透させつつ、冷蔵庫で寝かせれば完成する。

 「震災時、避難所でおにぎりを握れない子どもが多かった」(木村社長)。体験では防災教育の一環として、たらこのおにぎり作りも実施した。生徒らは「たらこは嫌いだったが好きになった」、「初めて食べたがおいしかった」などと感想を述べた。

 石巻市は全国有数のたらこ生産量を誇ったが、11年の東日本大震災で大きな被害を受けた。今では「たらこを食べたことや、見たことすらない生徒が多くいる」(同)とし危機感を募らせている。

 木村社長は「子どもたちに地元の企業のことや、モノづくりの楽しさを教えていくことが、地域の基幹産業を受け継いでいく上で大切」と語った。
(文=仙台・田畑元)
日刊工業新聞2019年1月29日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
近所に工場はあるけれど、何を作っているのかよく分からないという人も多いと思います。子どもたちにとって、体験を通して地元の企業を身近に感じられるいい機会になりそうです。

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