家庭用エアコン「白くまくん」国内生産維持…JCH、「競争力ある地産地消の拠点」に
ジョンソンコントロールズ日立空調(JCH、東京都港区)の菊地正幸日本&台湾バイスプレジデントは、「これまでと同じ工場でモノづくりを続ける」と強調した。日立製作所と米ジョンソン・コントロールズ・インターナショナルがJCHを独ロバート・ボッシュに売却した後も「白くまくん」ブランドの家庭用エアコンの国内生産を維持する方針をあらためて示した。日立はJCHの持ち分売却で“選択と集中”を加速し、さらなる成長につなげられるかが焦点となる。
2015年設立のJCHは日立製作所の家電子会社である日立グローバルライフソリューションズ(GLS)と、米ジョンソンの合弁会社。ボッシュはJCHの全株を取得し、各国の競争法の許認可などを経て25年6月までに買収完了を目指す。
JCHは栃木県栃木市で家庭用エアコン、静岡市清水区で業務用エアコンをそれぞれ生産している。このうち栃木市の工場はボッシュ傘下の新会社でも約1600人の雇用を維持。為替の円安が続いていることも踏まえ、「競争力のある地産地消の拠点」(菊地氏)として生産を続ける。販売は日立GLSが引き継ぐ。また、当面は「現状のサプライチェーン(供給網)は維持する」(同)方針だ。
一方で、約1500人を雇用する静岡市の工場は日立GLSに移管される。業務用空調の需要はデータセンター(DC)向けなどで底堅い上、日立グループのITやOT(制御・運用技術)との相乗効果によるビルや工場などでの冷熱ソリューションの供給体制強化が期待できる。
日立は09年3月期に巨額赤字を計上した後、10年以上にわたって大胆な事業再編に取り組み、子会社の売却や海外企業の買収を実施してきた。この結果、「デジタル」、エネルギーなどの「グリーン」、工場自動化(FA)などの「コネクティブ」の3領域を中心とした事業構成を実現し、23年3月期には当期利益で3期連続の過去最高を更新した。
今回の事業再編ではJCHの持ち分売却により、26年3月期に約1250億円の売却益の計上を見込む。生成人工知能(AI)をはじめとする成長分野の拡大の原資などに活用する方針で、一段の業績向上につなげられるかがあらためて問われる。
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