すでに多くの購入希望者、日立が開発した「二人羽織ロボット」の性能
日立製作所は模倣学習の研究プラットフォームとなる二人羽織ロボットを開発した。模倣学習は人の動作をまねして学習しロボット用の人工知能(AI)モデルを構築する。二人羽織のようにアームを操作してロボットに動きを教え込むと、AIロボが自律的に再現するようになる。模倣学習は世界的に研究が活発化し、複雑な作業への適用研究が進んでいる。今回のロボットへの評価は高く、すでに多くの購入希望者がいるという。
開発したのは日立の伊藤洋研究員と森翔太郎研究員、網野梓主任研究員。
8自由度のアームで双腕ロボットを構築した。腕の長さは72センチメートルで成人男性に合わせた。机の上で部品を組み立てるなどの作業に向く。肩に当たる部分が背骨に沿って上下する。肩の位置を足元まで降ろせば床での作業ができ、肩を上昇させれば最高で160センチメートルまで手が届く。
人の頭の位置とハンドにカメラを備えた。人の視点で全体を眺め、手先のカメラで把持対象などを細かく確認できる。下半身は3輪式の移動車体とし全方向に動ける。
動作の学習時は機体の背後に二人羽織操作用の小さな双腕を装着する。人が小型双腕を動かすと本体の腕も同じように動く。移動はジョイスティックで操縦できる。カートを押しながら障害物を避けるような動きなど、足の移動と手の作業が同時に必要な動作を行いやすい。
実際に洗濯機のふたを開けて衣類を取り出したり、高所の戸棚や足元の引き出しから物を取り出す作業ができた。二人羽織作業の動作データとセンサーデータを集めて模倣学習させると、AIロボが自律的に再現する。
市販の搬送車と卓上アームを組み合わせた研究用プラットフォームは売れているが、腕が短く、できない動作が多いとされる。開発したロボットは研究用途に合わせて設計し作業範囲が広がった。すでに販売依頼が多く寄せられており、日立は研究用機体として提供できるか検討する。研究で広まると海外の若手研究者のリクルートにもつながるとみており、提供方法を模索していく。
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