エアコン生産「国内回帰」を本格化、日立ジョンソン空調が生産比率5割超へ
日立ジョンソンコントロールズ空調(東京都港区、秋山勝司最高経営責任者〈CEO〉)は、日本市場向けルームエアコンの生産拠点の国内回帰を本格化する。国内生産比率を2024年度内にも50%に引き上げる方針を示してきたが、顧客の需要によっては50%以上にすることも検討する。中国・上海市でのロックダウン(都市封鎖)によるサプライチェーン(供給網)の混乱を教訓に安定供給を目指し、原材料高への対応も強化する。
泉田金太郎バイスプレジデント兼日本・アジア地域ゼネラルマネージャーは国内生産比率について、「50%は中間点。顧客のニーズに応じながら、50%以上を目指したい」と語る。国内向け家庭用ルームエアコンを製造する栃木事業所(栃木県栃木市)では室内機のラインを新設し、増産に対応する。
従来は国内向け家庭用エアコンのうち7割を中国の蕪湖市内の拠点で生産し、残りの3割を国内生産としてきた。国内回帰で供給の安定化を図るほか、発注から納品までのリードタイムを短縮する狙い。泉田氏は「顧客からは国内生産に対して評価をいただいている」と手応えを示す。
原材料高への対応では、室外機と室内機に搭載する熱交換器のアルミニウム化を進める。アルミは銅に比べ安価である上、軽量化も実現できる。室外機のアルミ化は進んでいるものの、室内機はまだ銅製が主流。泉田氏は「室内機のアルミ化も検討している」と話す。ただ「今夏もアルミの入手が困難だった」(泉田氏)ことを踏まえ、銅とアルミ両方に対応できるラインを構築してきた。
このほか、複数の調達先の確保や部品の共通化などにも取り組んでいる。一連の改革の実効性を高め、製品の安定供給につなげられるかが問われる。インタビュー 設備・人員の計画柔軟に/バイスプレジデント兼日本・アジア地域ゼネラルマネージャー 泉田金太郎氏
泉田氏に今後の戦略などを聞いた。(阿部未沙子)
―安定供給に取り組む背景は。
「中国でのロックダウンやロシアによるウクライナ侵攻など、今の社会は不確実性が高い。いろいろな選択肢を持つ必要がある。例えば、銅とアルミ両方に対応したラインの構築や部材調達先の多様化だ。日本と中国といった複数拠点でエアコンを生産できる体制も整えてきた」
―設備投資の考え方は。
「23年度以降も設備投資をしていきたいが、安定供給と品質の維持が前提となる。適切な自動化や、フレキシビリティー(柔軟性)のある人員配置を行いたい。エアコンは季節商品。4―7月のピークに合わせた設備投資をすると、ムダが生まれてしまう」
―今後の成長戦略で重要な点は。
「品質のほか、ブランド力、商品力、供給力の3点。ブランド力は『白くまくん』が有名だ。商品力は空気清浄機能や、汚れを凍らせて落とす凍結洗浄機能を評価していただいている。供給力は過去の当社と比べると格段に強くなっている」
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