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デザイン重視の建築物が増えている…不動産・建設業界、意匠法改正を有効活用

デザイン重視の建築物が増えている…不動産・建設業界、意匠法改正を有効活用

デザイン性を高めた大東建託の賃貸住宅「CIEL COURT(シエル コート)」

意匠(デザイン)を重視した建築物が増えている。その契機となったのは、意匠を知的財産権として保護する意匠法の改正だ。建築物と店舗などに使われる内装を保護対象に加えた改正意匠法が2020年に施行されて以降、不動産や建設業界の企業が対応を強化。建築物と内装を合わせた意匠登録は5月9日時点で1865件となるなど、有効活用する動きが着実に広がっている。(編集委員・古谷一樹)

改正前の意匠法で保護対象としていたのは、動産である「物品」の形状など。販売時に動産として取り扱われる組み立て式の建物に関しては意匠権で保護できた半面、土地に定着した建築物などの不動産は物品とは認められていなかった。

法改正により、建築分野では内装も保護対象となった。家具や什器(じゅうき)といった複数の物品の組み合わせや配置、壁や床などの装飾で構成する内装が、「全体として統一的な美感を起こさせる」場合、意匠登録できる。

建築物に関しては著作権法で保護される余地があるものの、対象は限定的。また不正競争防止法によって保護を受けるには、周知性や著名性が要件となるためハードルが高い。意匠法の改正は、対象が広くなり、早い段階から保護できる点で意義がある。

法改正にいち早く対応したのが、ブランド価値の創出や競争力の向上といった観点でデザイン性を重視するハウスメーカーやゼネコンだ。その一つが、賃貸住宅の建築などを手がける大東建託。同社は知的財産の取得促進に力を注いでおり、法改正の直後から賃貸住宅の意匠出願を開始。以降、登録数が徐々に増え、現在は75件となった。

塀(袖壁)を含めた住宅として意匠権を取得した積水ハウスの「駒沢シャーウッド展示場」

商品開発部企画デザイン課の桜井正雄課長が「今はディフェンスの意味合いが強い」と指摘するように、他社の模倣を防ぐためのツールとして活用。同時に、同社がデザインした商品が他社の商品と類似していないかについても調査を徹底するなど、独自性のあるデザインの商品開発につなげている。

積水ハウスも意匠権の取得に積極的だ。元々、組み立て家屋として年間20―30件の意匠出願を行っていたが、「建築物として出願するほうが実態に近い」(法務部の青木潤知的財産室長)と判断、意匠出願の件数を増やしている。

重要な案件については特許と意匠権の両面で権利化するなど対応の強化策が功を奏し、「模倣や係争の事例が発生していない」(同)。今後も、事業の成長への寄与度などを検証した上で権利化を進めていく考えだ。

法改正を機に出願や登録の件数が徐々に増えてきたとはいえ、日本企業のデザインに対する意識は海外に比べて依然低いとの見方がある。改正の大きな狙いだったブランド力の向上やイノベーションの創出といった成果の創出に向けて、特許庁では「引き続きデザイン力の強化に活用してもらいたい」(審査第一部意匠課)としている。

日刊工業新聞 2024年6月6日

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