知財戦略の立案・素材探索も…AGCが構築した対話型AI「ChatAGC」の中身
AGCは対話型人工知能(AI)の「ChatAGC」を構築し、まずは国内のAGC社員を対象に6月から運用を始めた。生成AIの活用が注目される中、業務の効率化だけでなく、知的財産戦略の立案や素材の探索といった価値創出にも順次役立てる方針だ。
AGCは1980年代から、デジタル空間でのフロート窯のシミュレーションなど、デジタル技術の活用に取り組んできた。デジタル・イノベーション推進部の太田宏志部長は「サプライチェーン(供給網)やエンジニアリングチェーンの最適化、市場ニーズに応じた商品開発など、今までの業務効率化の取り組みから、今後は価値の提供に向けてデータ活用のフィールドを広げていく」と話す。
これに資する取り組みとなりそうなのが、米マイクロソフトのサービスを活用して社内で構築したChatAGCだ。生成AI「チャットGPT」と同等の対話機能を持ちながらも、データは社外で保管・二次利用されないといった特徴を持つ。
本格展開に当たっては、6月に「AGCグループAI倫理基本方針/ガイドライン」を制定。ほぼ全ての事業部から約50人の社員を集めた「生成AI活用探索プロジェクト」も発足した。参加者は日々の業務を踏まえ、ChatAGCの活用方法についてアイデア出しを実施。数量、納期といった最適化の計算など、幅広い範囲で活用できることを確認したという。
現在のシステムでは多様な情報を入力できる汎用性の高さがある一方、最適な回答を得るには、質問を入力する人のスキルも求められる。そこで知財の解析や戦略立案、素材の提案、物流の最適化など、特定の分野に特化した対話型AIについても年内の構築を検討する。本来データサイエンスなどの知識が必要なシミュレーション技術も対話型AIに組み込むことで、「言語をインターフェースとして(容易に)使えるようになる」(太田部長)と期待する。
現在使うデータは社外の情報のみにとどまるが、今後は社内の膨大な開発データなどの活用も進める。加えて海外グループ会社など、利用先も拡大させる方針だ。この際、情報漏洩といった問題が生じないように情報セキュリティーを担保するのに加え、どの言語で入力しても最適な回答が得られるよう、AIに日本語・英語の両方でデータを学習させるなどの準備が重要になるとみる。活用ルールを浸透させながら、いかに効果を発揮できるかが問われる。(狐塚真子)