複合機部品の生産性2倍…富士フイルムBI、「市民開発型」DXでライン構築
富士フイルムビジネスイノベーション(BI)は、IT部門の社員だけに依存しない「市民開発型」のデジタル変革(DX)で、複合機の重要部品の生産性を2倍にする製造ラインを構築した。トレーサビリティー(履歴管理)の電子化や生産状況の見える化などの改善と自動化を組み合わせ、ライン増設を伴わない改善活動で生産性を向上させた。まずは改善レベルのDXを推進し、中長期で人工知能(AI)活用などを取り入れる。
生産子会社の富士フイルムマニュファクチャリング(神奈川県海老名市)の鈴鹿事業所(三重県鈴鹿市)で、複合機の基幹部品であるトナーを紙に定着させるための定着ベルトラインを構築した。今後は海老名事業所(神奈川県海老名市)の別工程ラインでもDXを検討する。また鈴鹿や海老名、竹松事業所(神奈川県南足柄市)、富山事業所(富山県滑川市)の4拠点間で遠隔地からの見える化などによる連携強化を図る。
鈴鹿事業所の定着ベルトラインでは無駄な作業工程を排除し、必要な部分のみを改善した。米マイクロソフト(MS)のデータ分析ツール「パワーBI」などを活用して全ての情報を紙からデジタルに置き換え、センサーから取得した情報を可視化。その情報から品質悪化時や設備異常時には警告を発して人が気付きを得られるようにした。紙で管理していた進捗(しんちょく)管理表や品質集計表などはダッシュボード化し、自動集計による工数削減などで作業効率を改善した。
富士フイルムBIは現場のニーズに基づいた全員参加型の生産方式を掲げる。生産工程の中身は機械や電気設備などさまざまで、全員参加で取り組むことにより改善対象を広げる効果をもたらすという。
日刊工業新聞 2024年03月27日