リコー・キヤノン…事務機器5社の業績予想、全社増収も営業利益はまだら模様
事務機器(OA)5社の2024年3月期(キヤノンは23年12月期)連結業績予想は、全社が増収を見込む。半導体を中心とする部品不足が改善し、複合機をはじめとする製品の販売台数が増えることが寄与する。ただ、営業利益は増益が2社、減益が2社、黒字転換が1社と、まだら模様だ。一部の部品は価格が高止まりする上、オフィスにおける印刷需要の減少が加速する懸念もある。各社はこうした環境への対応力が試される。
リコーは24年3月期に各利益段階で減益を見込む。複合機関連の消耗品や保守・点検のアフターサービスは今後も落ち込む見通しで、デジタル変革(DX)関連サービスで巻き返しを図る方針だ。23年3月期に解消しきれなかったA4複合機などの受注残もあり、24年3月期上期中の解消を見込む。大山晃社長は「デジタルサービスのストック収益を地層のように積み上げて収益率を改善する」と強調する。
セイコーエプソンも24年3月期に営業減益となる見通し。供給制約緩和で販売台数の増加を見込むが、為替の円高傾向を織り込み、想定レートを1ドル=129円(前期は135円)に設定した。
一方、富士フイルムビジネスイノベーション(BI)は富士フイルムブランドの複合機の海外での拡販に加え、DX支援や基幹システムの販売・導入支援などが寄与して24年3月期に増収営業増益を見込む。
ペーパーレス化に伴い市場が縮小傾向にある中、医療や監視カメラなど次の柱となる新事業に力を注ぐのがキヤノンだ。田中稔三副社長は「新事業の売り上げが特に増えているが、けん引するのがネットワークカメラだ」と語る。複合機などのプリンティング事業は23年12月期に売上高が前期比4・2%増を見込むのに対し、カメラをはじめとするイメージングは同12・1%増、医療のメディカルは同11・2%増の見通し。
他方、コニカミノルタは23年3月期に、遺伝子診断を手がける米アンブリー・ジェネティクスの関連で減損損失を計上し、1031億円の当期赤字に陥った。従来、ヘルスケア事業を新たな成長の柱に位置付けてきたが、コロナ禍もあり遺伝子検査の需要が想定を下回るなど事業環境が悪化した。今後は機能材料や計測器などのインダストリー事業を強化する方針だ。
コニカミノルタの大幸利充社長は「新しい柱をつくることが長年の課題」とした上で「思うようにいかない際の判断や計画のあり方を学び、新しいことに挑戦する際の撤退基準なども備える必要がある」と語る。
オフィスでの印刷需要の縮小傾向に危機感を抱き、デジタルサービスや新事業などを打ち出す構図は各社に共通する。新たな収益の柱をどれだけ早く確立できるかが問われそうだ。