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熟練技“紙さばき”再現したロボット投入、富士フイルムBIが解決する課題

熟練技“紙さばき”再現したロボット投入、富士フイルムBIが解決する課題

用紙の包装紙をゴミ箱に投入するなど、くず処理まで対応する

富士フイルムビジネスイノベーション(BI)は、2023年度中に印刷前に用紙をさばく「印刷用紙ハンドリングロボットシステム」を発売する。紙さばきは紙詰まりなどを防ぐための準備に不可欠な工程で、職人の熟練技術が求められてきた。印刷業界で高齢化や人手不足の課題がある中、富士フイルムBIは人手に依存しない紙さばき作業の省人化を提案する。人はシステムの管理など、よりクリエーティブな仕事をできるようにする。(高島里沙)

紙さばきの作業は、製紙会社から納入された用紙の包装紙を開封するところから始まる。作業者は積まれた包装紙にひたすらカッターで切り込みを入れて開封作業を続けなければならない。その後、静電気で紙同士が重なるのを防ぐため用紙間に空気を入れて、別の場所に移すところまでが一連の流れだ。

大判用紙の場合、重さは10キログラム以上になるなど持ち上げるだけでも一苦労。紙を傷付けずに用紙をたわませて空気を入れられるようになるには、2―3年はかかるとされる。熟練技が求められる難しい作業だ。1日に8―12時間繰り返す必要があり、作業者への負担が大きい。DX事業推進部の鈴木孝義部長は「用紙がないと印刷できないため印刷会社には必須の工程で、そこをどう変えるかが課題だった」と語る。

印刷用紙ハンドリングロボットシステムは、一連の紙さばき作業を全て自動で実現する。まずロボットハンドが備えるカッターで包装紙の側面を正確に切る。切り残しを防ぐためにセンサーが用紙の隅を検知することで用紙の位置を把握する。次に切った包装紙を吸着して専用のゴミ箱へ投入するため、くず処理まで対応可能だ。その後はロボットハンドが紙束を把持して用紙間に風入れし紙束を別の場所に移す流れだ。

ロボットハンドが用紙を把持し、用紙間に風入れをする

システムのカギを握るのはロボットハンドで開発に1年を要した。包装紙を切る工程と、用紙を1枚残さずつかんでさばく工程を使い分けるなど、繊細な人の手を再現するのは難しかった。従来の人手による作業をロボットに置き換えることで、人はシステムのオペレーション管理といったマネジメントを担えるようになる。作業者の負担軽減などを訴求していく方針だ。

DX事業推進部開発1グループの丸林一憲グループ長は「単に移載するロボットは海外にもあるが、カッター入れの機能を持つタイプは業界初だ」と強調する。4月からは23年度中の販売に向けて概念実証(PoC)を始めた。顧客が実際に使用する用紙を持ち込むなど導入イメージを高める場にする。

人手に依存する紙さばき作業は世界共通の課題で、富士フイルムBIでは国内外の3000事業所を販売対象に掲げる。海外では設備投資に旺盛な企業も多く海外比率は7割を見込む。国内では中堅・中小の印刷会社が多い中、サブスクリプション(定額制)サービスやレンタルなどより多くの企業が導入できる形態を検討中だ。労働集約型に加え長時間労働の常態化といった業界全体の課題解決にも一役買いそうだ。

日刊工業新聞 2023年05月09日

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ロボットと働く
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製造現場からオフィスまで、その存在感が増すロボット。多様な業界によるその活用法を追いました。

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