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TSMC稼働に商機あり、九州地銀が連携強めて地域振興

TSMC稼働に商機あり、九州地銀が連携強めて地域振興

昨年6月に開設した肥後銀行の台北事務所。増員も検討している

オール九州でマッチング

熊本での台湾積体電路製造(TSMC)の本格稼働が年内に迫る中、金融機関による台湾関連の動きが活発化している。台湾大手傘下の東京スター銀行は熊本市に拠点を新設。地銀は台湾との連携を強めて需要の取り込みと地域振興に動く。(九州中央・片山亮輔、西部・三苫能徳)

「台湾から進出する企業に金融サービスを提供できる銀行として日台の架け橋となりたい」。東京スター銀の伊東武頭取は2023年12月、熊本オフィス(熊本市西区)の開所式でこう力を込めた。

同行の拠点新設は5年ぶり。TSMC進出に伴い、熊本などに赴任する海外駐在員にサービスを提供する。台湾の中国信託商業銀行(CTBC)を親会社とすることから、外国人向けサービスで強みを生かす。

半導体製造ラインの検査などを手がける、マイクロプログラムインフォメーションのトニー・ウー社長は「台湾でのCTBCの信用もあり、仕事がしやすくなるのでは」と好意的。熊本での金融機関とのスムーズな関係構築に期待する。

半導体チップやウエハーの搬送容器を手がけるグデンプレシジョンは日本への拠点進出を検討。リン・ヤーウェン副社長は「できれば24年にも社員を派遣したい」と意欲的だ。

地場の九州フィナンシャルグループ(FG)の笠原慶久社長(肥後銀行頭取)は「九州域外の銀行が熊本に拠点を開設するのは久しぶり。熊本県経済にとって良い流れだ」と歓迎する。

同時に地銀としても台湾との関係を強化する。九州FG傘下の肥後銀行は23年6月、台湾台北市に台北事務所を開設した。情報収集・発信拠点とし、台湾に進出する取引先や日本との事業を検討する台湾企業を支える。これまで日台の300者ほどが来訪。現状の3人体制から増員も検討する。

熊本地盤の熊本銀行を擁するふくおかFGは、22年12月に中国信託(CTBC)フィナンシャルホールディングと業務提携した。傘下の福岡銀行が提携していたが、TSMC進出を機に関係を強める。五島久ふくおかFG社長(福岡銀頭取)は、CTBC系の東京スター銀の進出で競合する場面も出てくるとしながらも「CTBCとは連携する方が増えるだろう」と期待する。

さらには福岡、肥後両行の呼びかけで、九州・沖縄11地銀による半導体産業振興に向けた連携が16日に走り出した。ここでも台湾との結びつきは一つのカギになる。五島氏は「(台湾の銀行と)個別行で結ぶ連携をまず活用するが、広くシェアできる枠組みも必要。台湾側と話をしていく」と前向きだ。

11行連携では沖縄の存在も光る。台湾との歴史的な結びつきや地理的な近接性に加え、沖縄には半導体関連の装置・部品メーカーが中小規模の工場を構える。琉球銀行の川上康頭取は台湾との往来の多さなどを挙げて「九州と台湾の中継点として発展に貢献できる」と胸を張る。

地域を挙げた支援の意義について、九州FGの笠原社長は「オール九州でのマッチングにより(経済の)パイを大きくすることが重要」とする。個々の案件に応じて情報やネットワークを共有し、「健全な競争と協調の時代」(笠原社長)の中で地域を支える使命を全うする構えだ。

日刊工業新聞 2024年01月26日

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