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半導体ガス生産、日本酸素がグローバル供給網強化へ一手

欧州に橋頭堡築く
※自社作成

日本酸素ホールディングス(HD)は2024年度にも欧州で、半導体製造に用いる特殊ガスの生産に乗り出す。ベルギー北部アントワープ州のオーベル工場に製造設備を導入する。欧州では域内生産の拡大を支援する「欧州半導体法」を発効させ、半導体工場を誘致する動きが活発化している。同社は長期的な材料需要の増加を見据えて欧州に橋頭堡(ほ)を築くほか、日米中韓に次ぐ拠点を設けてグローバルサプライチェーン(供給網)を強靱(きょうじん)化する。

日本酸素HDは23年末までにベルギーに、特殊ガスの精製充填などを担う工場建屋を新設した。現在、主要設備の導入を進めており、順次稼働させる。欧州事業会社傘下の工場を拡充し、日米中韓に次ぐ5地域目の電子材料ガス製造地とする。

生産品目は三フッ化窒素(NF3)、シリコン系など比較的使用量の多いガスを想定するが、顧客の要望を反映し柔軟に対応する。エッチングや成膜工程など半導体製造工程に不可欠なガスの生産体制を構築し、欧州地域での供給能力を強化する。

欧州連合(EU)は23年に発効した欧州半導体法に基づき、域内の産業育成に官民で430億ユーロ(約6兆9000億円)を投じる計画。30年に半導体生産の世界シェアを20%に倍増させる目標を掲げ、工場誘致などへの公的支援を積極化している。足元では米インテルがドイツ東部やポーランドなどに半導体工場を新増設する計画を公表。台湾積体電路製造(TSMC)もドイツ東部で欧州初の工場建設を決めるなど、大型投資の表明が相次ぐ。

半導体製造には全工程で約30種類のガスが使用される。半導体の生産拡大や高性能化に伴い、世界的な需要の増加が見込まれる。日本酸素HDは電子材料ガス事業をグループ全体で最適化する「トータルエレクトロニクス(TE)」を重点戦略に掲げており、グローバルで成長市場の取り込みを狙う。

調査会社マーケッツアンドマーケッツの情報サービス「ナレッジストア」の調査資料によると、電子・半導体産業向け特殊ガスの世界市場は23―28年に年平均4・3%成長し、25年には市場規模が100億ドル(約1兆5000億円)を超えると予想する。


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日刊工業新聞 2024年02月21日

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