材料の複数因子を同時最適化、トヨタが開発支援ツールに実装
トヨタ自動車はデータ駆動型の材料開発支援ツールに多目的最適化を実装した。データ駆動型開発はデータから人工知能(AI)技術などで実験条件を絞り込み、その実験データでさらに条件を絞り込む。この過程で材料の強度や耐久性、コストなど10項目以上の因子を同時に最適化できるようになった。開発プロセスの効率化につながる。
材料解析クラウドサービス「WAVEBASE」に多目的最適化機能を実装した。材料の物性や顕微鏡画像、測定スペクトル、材料の製造条件などをAI技術で解析する。画像中のパターンなどの特徴量を抽出し、性能などに影響している要因を探す。開発者でも見逃すような情報を最適化に利用できる。
多目的最適化で同時に追求できる性能や製造条件などの因子が増える。材料の性能は物性が発現する条件、コストは製造条件などと異なるメカニズムで決まる。従来は、性能はAI支援で追求しつつも、コストは開発者が探索範囲を制限して最小化するといった形で利用されていた。
AI支援で最適化できる因子が増えると探索範囲が広がり、開発者の想定外の材料が見つかる可能性がある。また素材業界では製品を電子部品や機械部品に組み込むために、顧客の製造プロセスに適合させることが求められる。そのため材料の主たる性能に加えて、溶剤耐性や耐熱性など複数の因子を顧客ごとに最適化する必要があった。この追加の開発業務の効率性が技術力の差になっていた。ツールとして提供することで、業界の底上げにつなげる。
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日刊工業新聞 2024年02月22日