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認証不正で経営体制刷新、ダイハツ・井上新社長の素顔

認証不正で経営体制刷新、ダイハツ・井上新社長の素顔

会見する井上ダイハツ次期社長

ダイハツ工業は13日、車両認証試験をめぐって大規模な不正を行っていた問題を受け、3月1日付で経営体制を刷新すると発表した。トヨタ自動車の井上雅宏中南米本部本部長(60)がダイハツ社長に就き、現場経営に詳しい桑田正規トヨタ自動車九州副社長や、認証関連実務に明るいトヨタの柳景子カスタマーファースト推進本部副本部長が新取締役として脇を固め、再発防止策を実行して経営再建を急ぐ。(総合1参照)

ダイハツの新経営陣は、取締役の人数を従来の6人から4人に減らし、会長職を廃止し主権を現場に戻す。開発畑で、ダイハツでキャリアを積んできた星加宏昌氏を除く3人が、トヨタ自動車出身者だ。「現所属に関係なく現場で経営を指揮することを第一に考え、人選した」(佐藤恒治トヨタ社長)という。

新体制では、井上氏が現場の社員が正しいことを言える風土改革を担い、今回認証不正が起きた開発や生産現場を星加氏、桑田氏がそれぞれ担うとみられる。

トヨタグループでは日野自動車豊田自動織機でも不正が相次いで発覚しており、信頼回復は待ったなし。トヨタ自動車主導の“新生ダイハツ”は、真に生まれ変わることができるのか。改革の真価が問われる。

素顔/ダイハツ工業社長に就任する井上雅宏(いのうえ・まさひろ)氏/対話で信頼を勝ち取る

「厳しい事業環境下でもコミュニケーションを大切にする」。トヨタ自動車の佐藤恒治氏は井上氏をこう評する。ブラジルやアルゼンチンの地域経営の再構築など中南米事業の構造改革に奔走してきた。現職の中南米本部長としては40カ国の販売・製造の現場をワンチームにまとめるリーダーシップを発揮する。

トヨタに入社後、会社人生の約半分を海外で過ごした。人の話を聞くためにはまず自分から話しかけ、相手の信頼を勝ち得ないと本音を引き出せないとの信念がある。ダイハツでも現場で対話を進め、トップダウンとボトムアップを融合した組織を目指す。

内示を受け、責任の重さに身震いしながらも喜びを感じた。京都府出身で、実家が自営業を営んでいたことから、間近で使っていたダイハツ車や軽トラックにはなじみがある。「常に現場と会話してきた知見を生かし、ダイハツの再生をけん引してほしい」と社内からの期待がかかる。(名古屋・増田晴香)

日刊工業新聞 2024年02月14日

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