JERA・武豊火力で爆発火災…バイオマス発電の事故相次ぐ、問われる安全性
再生エネ拡大で施設増、早急な対策必要
JERAの武豊火力発電所(愛知県武豊町)で1月31日、爆発火災事故が発生した。燃焼前に木質バイオマス燃料を一時保管する設備「バンカ」が火元とみられる。原因は調査中で、特定するまで武豊火力は運転再開しない。武豊火力のほか、同燃料を扱う各地の発電所で発煙や発火事故が相次ぐ。バイオマス発電は短期・中期的に再生可能エネルギー電源を増やす点で有望視されていたが、その安全性が問われている。(名古屋・永原尚大)
火元とみられるのは木質バイオマス燃料を約300トン保管していたバンカで、燃料を送るベルトコンベヤーに延焼した。爆発音がした後、通常は20度C程度のバンカ内温度が55度Cまで上昇したことがセンサーで確認されている。負傷者はいなかった。中部地域への電力供給にも影響は出ていない。
武豊火力は2022年8月に運転を開始したJERAの最新鋭火力。5号機のみで構成し出力107万キロワット。単機の発電設備としては国内最大級で、一般家庭約240万世帯分の年間電力量をまかなう。石炭火力の低炭素化を狙い、使用燃料の17%を木質バイオマスとした。
武豊火力では22年8月と9月、23年1月に発煙事故が発生していた。これらの原因の一つとして、「外れた部品が回転部と接触して温度が上がり、堆積していたバイオマスの粉に着火した」(JERAの浴田孝司執行役員)ことが挙げられる。
燃料として使う「木質ペレット」は粉砕した木材を乾燥・圧縮させて製造する。振動や衝撃でペレットが崩れると、粉が生じるという。武豊火力では設備の点検頻度を増やしたり、粉が生じにくいようにベルトコンベヤーを改造したりするなどして対処してきた。
バイオマスを扱う発電所での発煙・火災事故は相次いでいる。木質ペレットが発酵・酸化して生じた可燃性ガスの自然発火や、機械の摩擦熱による粉の発火など原因はさまざまだ。経済産業省によると、23年だけで6件確認された。中部電などで構成する米子バイオマス発電所(鳥取県米子市)では貯蔵施設が爆発火災を起こし、関西電力の舞鶴発電所(京都府舞鶴市)や大阪ガス傘下の袖ケ浦バイオマス発電所(千葉県袖ケ浦市)では貯蔵設備が燃えた。
バイオマス発電は再生可能エネルギーの拡大で注目される電源の一つ。「昼夜問わず安定的に発電でき、環境アセスメントなどの手続きが容易で開発期間が短い」(中部電幹部)という利点があり、全国各地で大型発電所の建設ラッシュが続いている。林野庁によると、木質バイオマス発電所の稼働件数は22年3月時点で183件。政府は30年時点で電源構成の5%程度まで拡大させる方針を第6次エネルギー基本計画で打ち出している。
エネルギー供給の基本は「S+3E」にある。Sは安全性で、3Eは安定供給と経済効率性、環境適合だ。武豊火力をはじめ、各地で発生している事故は安全性の観点で無視できない。早急な原因特定と同時に、事故を防ぐための設備改良や安全基準の策定につなげることが求められる。