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石炭火力発電でアンモニア混焼…「事実上の商用化」が始まる

石炭火力発電でアンモニア混焼…「事実上の商用化」が始まる

アンモニア20%混焼へ向け準備が進む碧南火力発電所

石炭火力発電の燃料の一部にアンモニアを用いる大規模混焼を見据えた動きが活発化している。JERAは碧南火力発電所(愛知県碧南市)4号機で、アンモニアの20%(熱量比)混焼を2024年3月から2カ月程度実証する予定で、現時点までに改造バーナーの据え付けや貯蔵タンクの設置といった作業のほぼ4割が進展。実証に必要なアンモニア調達のめども付けた。奥田久栄社長は今回の実証を「事実上の商用化」と位置付けており、早ければ27年の本格稼働に向けて意欲を示す。

アンモニア混焼をめぐっては、欧州では石炭火力発電の延命策との批判もあるが、日本は電力の安定供給と脱炭素を両立できる現実的な選択肢と位置付けている。JERAは碧南火力発電所で実施するアンモニア20%混焼の実証開始時期を当初、24年度としていたが、これを23年度に1年前倒しした。一連の準備作業について奥田社長は「非常に順調に進んでいる」との認識を示す。

並行して燃料アンモニアの調達も急ぐ。今回の実証に必要な3万―4万トン分については三井物産との間で売買契約を締結したが、石炭火力1基の20%混焼には年間50万トン規模のアンモニアが必要となる。

燃料アンモニアを大量製造し、供給する事例は世界的にもまだみられないことから調達ルートの確保は大きな課題。そこでJERAは国際競争入札で選定した欧米のアンモニア製造2社との間で、発電燃料用のアンモニア製造プラント開発に向けた検討に入った。まずは年間50万トンの調達規模に道筋を付けた上で、27年以降の継続的な確保を見込む。

中東や豪州からの調達も視野にある。30年以降は混焼比率を50%以上まで段階的に引き上げることも目指しており、これら規模を達成するには年間200万トン規模のアンモニア需要が見込まれる。

今後のアンモニア調達の方針について奥田社長は「製造から輸送、受け入れまで当社が一気通貫で関与することが条件になる」との見方を示す。発電に適した形で一定量を確保すると同時に、取引最適化で柔軟性も担保する。一連の戦略の念頭には、需要変動が大きい中で安定調達と経済性の双方を追求した「液化天然ガス(LNG)で得られた教訓」がある。

日刊工業新聞 2023年07月03日

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