HVO対応の乗用型草刈り機で攻勢、井関農機の勝算
欧州・オセアニア開拓
小型で高い作業性
井関農機は欧州とオセアニア市場で、水素化植物油(HVO)燃料に対応した乗用型草刈り機で攻勢をかける。エンジン馬力向上や集草装置(コレクター)容量の増量で、小型ながらも高い作業性を備える2機種をこのほど両市場に投入した。二酸化炭素(CO2)排出量削減に貢献する長所を訴求し、自治体や景観整備事業者向けに年3000台の販売を目指す。
投入した機種は、22馬力の「SXG327」と20馬力の「同324」。HVO燃料に対応したエンジンと燃料ホースを搭載。通常の燃料でも走れる。電動草刈り機と比べると改造が小規模なため、車体価格は従来機と同等という。HVO燃料も欧州では1割高程度の値段で購入できる。
井関農機は欧州の景観整備向けの乗用草刈り機で50年以上の歴史があり、知名度も高い。街中の公園やスポーツグラウンド、住宅地などの草刈り用途に年間を通じて使われる。
欧州では軽油と混合したバイオディーゼルから、より環境負荷低減効果の高いHVO燃料に転換が進みつつある。
同社は22年12月に、リチウムイオン電池(LiB)搭載の電動草刈り機も限定30台でモニター販売を始めた。ただ、電動機は現状は価格が従来機より2倍強と高く、充電時間も4時間以上を要する。そのため普及にはまだ時間がかかると見て、HVO機の販売を優先する。
将来は電動機も電池技術進歩や充電器増設で普及が見込め、「モニター機で蓄積したノウハウを生かし、短期間で商用型電動機も開発できる」(同社)という。
日刊工業新聞 2023年12月20日