「農業はやり方次第で成長産業に」―井関農機がベンチャー投資加速、10億円枠設置
井関農機がベンチャー企業への投資意欲を強めている。2022年6月に田んぼの自動抑草ロボット開発の有機米デザイン(東京都小金井市)に2億円を出資したのに続き、23年にはベンチャー企業を対象とした当面の出資枠として10億円を設定し、その審議を行う「出資管理委員会」を7月1日付で設置した。意思決定の迅速化で先端技術を持つベンチャーを取り込み、自社の成長につなげる方針だ。
「農業は今、大きな転換点を迎えている。やり方次第で成長産業になり得る」。井関農機の冨安司郎社長は力を込める。世界的な人口増加と地政学リスクを背景に食糧の自給率向上や増産の需要は増し、農業分野の生産性向上は喫緊の課題だ。
井関農機は電動農機や、マップデータ連動型の可変施肥対応田植機をはじめ、高い技術力に強みを持つ。そんな同社でも新たな課題に対応していくには、ベンチャー企業や大学など外部の知見を取り入れることが不可欠となっている。
出資した有機米デザインの「アイガモロボ」は販売好調で、23年には500台の売り上げが射程圏内だ。今後の出資の主要テーマは「自動化や電動化、環境関連」(冨安社長)という。
自動化ではレベル3対応の完全無人型トラクターの開発やスマート農業機械、データ利用型農業への対応が念頭にある。電動化では電池技術や水素燃料電池技術を持つ企業などを視野に入れる。
農機も建設機械と同様、電動化には電池技術がカギを握ると言われ、競争は激しい。有望投資先を見極める目利きも重要になる。
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日刊工業新聞 2023年08月30日