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世界最高のプロトン伝導性、東工大が中低温で酸化物開発

世界最高のプロトン伝導性、東工大が中低温で酸化物開発

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東京工業大学の斉藤馨大学院生と八島正知教授は、中低温で高いプロトン(水素イオン)伝導性を示す酸化物を開発した。結晶中の酸素が抜けた空孔と元素置換でプラス電荷を増やしてプロトンの伝導性を向上させた。320度C以上で1センチメートル当たり0・01ジーメンスと世界最高になる。燃料電池の電解質に提案していく。

バリウム・スカンジウム・モリブデン酸化物を開発した。スカンジウムは3価のプラス電荷を持つが、モリブデンは6価のプラス電荷を持つ。スカンジウムの2割をモリブデンに置き換えてプラス電荷を増やし、プロトンが物質中でトラップされにくくした。

また同物質は酸素の約7%が酸素空孔になっている。ここに水分子が入り込むと酸素が引き抜かれて、残ったプロトンが伝播する。実験では50―500度Cで高いプロトン伝導性を示し、320度C以上では世界最高だった。プロトンを利用する中低温燃料電池は白金や耐熱材料を削減でき、安価なシステムになる可能性がある。

日刊工業新聞 2023年11月27日

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