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有機半導体に水溶液中で電荷注入、物材機構などドーピング技術

有機半導体に水溶液中で電荷注入、物材機構などドーピング技術

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物質・材料研究機構の石井政輝研修生と山下侑研究員、東京大学の竹谷純一教授らは、水溶液中で有機半導体に電荷を注入するドーピング技術を開発した。ドーピング量を水溶液の水素イオン指数(pH)で制御できる。実験では有機半導体の電気伝導度を5ケタの範囲で制御できた。プロセスの再現性が高く、有機エレクトロニクスの基盤技術になる。

開発した手法の機構およびpHによる有機半導体薄膜のドーピング量制御(物質・材料研究機構提供)

ベンゾキノンを用いたプロトン共役電子移動反応で有機半導体中に正孔や疎水性陰イオンを注入する。ベンゾキノン水溶液に有機半導体薄膜を漬けると、薄膜から電子が引き抜かれて溶液中のプロトンと合わさってベンゾキノンと反応する。有機半導体には電子の代わりに正孔が注入される。同時に疎水性陰イオンも導入される。

この反応速度は水溶液中のプロトン濃度で調整できる。実験ではpH1―4の水溶液で処理し、有機半導体の電気伝導度を5ケタの範囲で制御できた。従来は真空下などでドーピングしており、不安定だった。

日刊工業新聞 2023年11月01日

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