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東工大がSOFC固体電解質燃料電池向け開発、プロトン通さない新材料

東工大がSOFC固体電解質燃料電池向け開発、プロトン通さない新材料

バリウムとニオブ、モリブデンの六方ペロブスカイト関連酸化物の結晶構造。天面と底面が酸化物イオンの通り道になる(東工大提供)

東京工業大学の八島正知教授と作田祐一大学院生らは豪州原子力科学技術機構と共同で、プロトンを通さずに酸化物イオンだけを通す新材料を開発した。600度Cではプロトン伝導性がほぼ0になり、酸化物イオン伝導度は2・2倍になる。固体酸化物形燃料電池(SOFC)の固体電解質に提案していく。

バリウムとニオブ、モリブデンの六方ペロブスカイト関連酸化物のプロトン伝導性を抑え、酸化物イオンの伝導性を向上させた。ニオブの3・75―5%をタングステンやクロムで置き換える。すると結晶格子の隙間に存在する酸素が増える。酸素が玉突きを起こし酸化物イオンが高速移動する。

同時にプロトンが伝導しにくくなる。プロトンは結晶格子の隙間に水分子の酸素が捕えられ、酸化物イオンとプロトンが水酸化物イオンとなって結晶中を伝わる。元素置換で結晶格子の隙間がふさがると、水分子の捕捉を防げプロトン伝導性が下がる。

タングステン置換材は400度Cの酸化物イオン伝導性が、実用材のイットリア安定化ジルコニアに比べて1ケタ高くなった。プロトン伝導性はほぼ0になった。これでSOFCに利用できるようになる。レアアース(希土類)を使わなくて済む。ガスセンサーや酸素分離膜材料などにも提案していく。日本セラミックス協会が8日から神奈川大学みなとみらいキャンパスなどで開く「2023年年会」で詳細を発表する。

日刊工業新聞 2023年03月03日

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