単結晶に近い窒化アルミをステンレスに成膜、ユーパテンターが装置開発
ユーパテンター(千葉県船橋市、本多祐二社長)は、山口県産業技術センターと、単結晶に近い窒化アルミニウム(AlN)を、ステンレスに成膜できる反応性スパッタリング装置を開発した。これまではシリコンウエハーに下地膜を成膜し、その上からAlNを成膜したが、これらが不要になり、大幅なコストダウンが可能になる。携帯電話用の表面弾性波(SAW)フィルターなどへの応用が期待できる。
ステンレス基板上に成膜したAlNをX線回折プロファイルで測定したところ、半値幅(ピークの高さの半分の値でのスペクトルの広がり)で0・4328度を確認。反応性スパッタリング法でさまざまな条件でAlNを成膜し、結晶性と硬さを評価するなど最適条件化して実現した。
単結晶に近く、硬いAlMを成膜することで、圧電特性が高まるとともに、バンドギャップ(禁制帯のエネルギー幅)が広がるほか、耐熱性と熱伝導性が向上する。そのためヒートシンクや発光材料への応用も期待できるとしている。
近く受注活動を始め、半導体材料や装置を基礎研究する大手企業の研究室や大学など研究機関をターゲットに販売を進める。消費税抜きの価格は約5000万―1億円で、2025年3月末までに3台の販売を目指す。装置購入を前提にサンプルの製造にも対応する。
今回の装置販売に合わせ、24年1月に本社と研究開発部門を中小企業基盤整備機構が運営するインキュベーション施設のベンチャープラザ船橋(千葉県船橋市)に集約する。中小機構による経営サポートを受けながら事業を展開。売上高で30年3月期に23年3月期(24年3月期目標は1億2000万円)比10倍の10億円を目指す。
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日刊工業新聞 2023年11月21日