物価高に追い付かず…「実質賃金」18カ月連続で減少
厚生労働省が発表した9月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動を加味した実質賃金は前年同月比2・4%減と18カ月連続で減少した。賃上げが物価上昇に追い付いていない現状があらためて示された。政府は賃上げを促す総合経済対策を2日に閣議決定しており、実質賃金がいつプラスに転じるかが今後の大きな焦点になる。
労働者1人当たりの平均の名目賃金を示す現金給与総額は同1・2%増の27万9304円と、2023年春闘の堅調な賃上げ効果が出始めている。ただ、円安基調に伴う輸入物価の高騰などが可処分所得を減殺し、実質賃金は水面下に沈んだままなのが現状だ。毎月勤労統計で用いられる消費者物価指数は、持ち家の帰属家賃を除くベースで9月は3・6%上昇した。
政府はデフレ脱却に向け、総合経済対策において賃上げ促進税制の延長・拡充や、所得・住民減税などによる可処分所得の増加を盛り込み、個人消費の喚起を起点とする経済好循環の実現を目指している。連合は24年春闘で「5%以上」の賃上げ率を目標に掲げ、23年春闘の「5%程度」を上回る賃上げに意欲を示す。また、流通や外食、繊維などの労働組合が加盟するUAゼンセンはベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ目標を6%とする案を示して、加盟労組との協議に入った。2年連続で連合要求を上回っており、人手不足に悩むサービス業などでの賃上げの底上げが期待される。
企業の4―9月期決算では自動車産業をはじめ、好業績の発表が相次いでいる。経団連は24年春闘で23年を上回る実績を目指しており、実質賃金の反転に向けたカウントダウンが始まる環境が整いつつある。
日刊工業新聞 2023年11月08日