国産木材加工に照準、木工機械メーカーが開発加速する新技術
日本の木工機械メーカーに新たな商機が生まれている。輸入木材の高騰(ウッドショック)を機に、用材に占める国産材の比率が高まっており、国産木材加工に対応した機械の需要が広がる。人手不足に伴う自動化ニーズも追い風だ。新規住宅着工件数の減少など課題はあるが、木工機械メーカー各社は新製品・新技術の開発を加速している。(名古屋・津島はるか)
5日に名古屋市港区のポートメッセなごやで開幕した木工機械の展示会「日本木工機械展2023」(日本木工機械工業会主催)。出展したオーアイ・イノベーション(静岡県島田市)は、大径化しているスギに合わせて、大径材用で高効率的な製材機械を開発し、披露した。2次元(2D)スキャナーを搭載し、製図や位置決めまで自動化することで操作者に必要な経験、技量をカバーでき、人手不足にも対応する。
農林水産省がまとめた製材や合板など用材の供給量をみると、12年に28%だった国産材の割合は、ウッドショックの影響などで22年に36%まで上がった。輸入材は乾燥した状態の半製品だが、国産材は製材、乾燥が必要となる。そのため乾燥機械や木材を加工するための設備投資が活発化している。
合板検査の日本農林規格の改定による新たなニーズも生まれた。従来の合板製品の材面の品質検査は、有資格の検査員による目視選別だったが、23年から機械による選別も認められるようになった。
展示会場では、キクカワエンタープライズや橋本電機工業(愛知県高浜市)が人工知能(AI)を活用した自動検査装置を展示するなど、合板製造機メーカーは、AIや画像処理などの最新技術を活用した自動選別機械の開発に力を注ぐ。
自然物の木材は、金属などと違い、その都度、状態が異なる。このため、これまでは自動化が比較的に難しかったが、日本木工機械工業会の菊川厚理事長(キクカワエンタープライズ社長)は「センサーや人工知能(AI)の技術により、自動化できるようになってきた」と技術の進展状況を捉える。
今後、ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から公共建築物用の木材需要の増加が見込まれる。大型建造物の建設には長大な材料が必要だ。
大型の加工機で大きく重い木材を加工することとなるが、その分、作業には危険が伴う。菊川理事長は「センサーやAIで、重い木材でも安全に加工できる仕組み作りが必要だ」と主張する。地域材活用を促進する補助制度を導入する自治体も増えており、国産材活用に関心が集まっているだけに、木工機械の技術・機能の重要性が一層高まりそうだ。
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