アパレルに環境対応素材、三菱ケミカル・ハイケム…化学メーカーが知恵絞る
化学会社がバイオマスや生分解性プラスチックといった環境対応の素材をアパレル関係で訴求している。三菱ケミカルグループは運営するアパレルブランドで木材パルプと繊維を組み合わせたアイテムを販売する。ハイケム(東京都港区、高潮社長)は、トウモロコシ由来の生分解性プラスチックのポリ乳酸(PLA)繊維を展開。環境に優しい素材を最も身近な一つである衣服向けに提案し、裾野を広げるために知恵を絞っている。(山岸渉)
三菱ケミカルグループはアパレルブランド「age3026」を展開する。木材パルプを主原料とし、同社だけが生産するトリアセテート繊維「ソアロン」を使用する。環境に配慮しつつ、高品質な服を提供することを狙っている。
age3026ではTシャツに続く「エントリーモデル」の第2弾として、公式サイトなどで長袖プルオーバーの販売を始めた。ハイネック長袖プルオーバーとクルーネック長袖プルオーバーを用意している。
速乾性があり、家庭でも洗濯できるソアロンの生地を使用したシリーズとしてより多くの消費者に着心地の良さなどを体感してもらいたい考えだ。シーズン限定カラー「栗梅色」を採用したロングシャツも11月30日まで同サイトで受注を受け付けている。
一方、ハイケムはトウモロコシ由来のPLA繊維「ハイラクト」の展開を加速する。植物由来のため生育過程で二酸化炭素(CO2)を吸収して焼却してもCO2が増えず、一定の条件下で水とCO2に分解される特徴などを持つ。最近ではタキヒヨー(名古屋市西区)と連携し、ハイラクトがシップス(東京都中央区)の2023年春夏コレクションのTシャツ素材に採用された。
ハイラクトはイタリア・ミラノで20―21日に開催している国際的な糸とテキスタイルの見本市に出展。欧州におけるハイラクトの認知度を高め、PLA繊維の世界的な普及を進めていく構えだ。
こうしたサステナビリティー(持続可能性)に資する素材の訴求では、身近な日用品への採用などで力を入れる動きが出てきている。特に衣服は最も身近な存在の一つ。アパレルでは「環境に優しい点を重視して買う消費者は一定数いる」(化学業界関係者)と分析する声がある。
一方で「コストがまだ高い」(化学メーカー幹部)などの課題は横たわる。訴求の動きは緒に就いたばかりであり、各社は一層知恵を絞っていく。
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