建築家・隈研吾氏が力説、木が持つ“つながる”力
木材の価格高騰「ウッドショック」や脱炭素社会、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成などの観点から木材への注目が高まっている。2021年11月に発足した日本ウッドデザイン協会(東京都港区)は、木に関する製品や取り組みへの顕彰事業「ウッドデザイン賞」を中心に、木を活用した社会課題の解決を目指して活動する。同協会会長で世界的建築家の隈研吾氏に木材活用の意義を聞いた。
―会長就任の経緯を教えてください。
「ウッドデザイン賞には初期からずっと関わってきた。協会という形でいろいろな企業を巻き込んで社会的な運動にしようという提案があり、大賛成、ぜひ協力しようと考えた。自分自身覚悟を決めて引き受けた。協会の社会的役割を意識して盛り上げていきたい」
―木の良さや価値を再発見させる製品や取り組みを評価・表彰する顕彰制度ですね。
「15年から7回実施してきたが、年々、より面白い作品が集まり盛り上がっている。木によるハード面のデザイン性の高さ以上に、木を使うことで生まれたソフト面での面白さ、“人間的な温かみ”が目立つ作品が増えている印象だ」
―ソフト面の面白さは、木を使うことで生まれるのでしょうか。
「木材を使うと、地元の大工など地域の人が参入しやすい。また、紙や布など地域の小さな産業との親和性といった“つながる”力が木にはある。木を柱として集まった人々の作品は、人間的な魅力を含んでいる」
―他のデザイン賞でも、木材を使った製品の受賞が目立っています。
「以前、木材はデザインの中で脇役のような扱いで、シャープな金属やプラスチックなどを使ったデザインが主流だった。近年、木材が主役に躍り出てきた。特にコロナ禍による社会の価値観の変化が影響しているように感じる。タイムリーな時期に協会を設立できた」
―注目が高まる木材ですが、価格が高止まりの状況です。
「プロジェクトにも影響したため事態の収束を望むが、輸入材の高騰・品薄をきっかけに国産材を調達する向きが出てきた。国産材活用は日本再生の一つのカギ。その点では良い傾向ではないか」
【記者の目/日本文化の再生へ役割に期待】 林業が盛んではない英国やフランスでも木材活用が進んでいる。日本では21年の法改正で民間建築物も木材利用促進の対象となり、今後活用のアイデアが増えるだろう。同協会には高層ビル群を開発してきた三菱地所なども参加し、デベロッパーも本気だ。日本の木の文化を再生する役割に期待がかかる。(成田麻珠)