ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は４日、人工知能（ＡＩ）の進化について「１０年以内にＡＩが人類の英知の総和の１０倍優れるアーティフィシャル・ゼネラル・インテリジェンス（ＡＧＩ、汎用人工知能）を達成する」と予測した。膨大なデジタルデータを自らリアルタイムに学習して推論を導き出すＡＧＩは、全産業を根底から変革すると指摘。ＡＧＩ活用に向けて日本が目覚めるよう訴えた。

都内で同日講演した孫氏は、ＡＧＩを実現した社会について「（自動車やバスなど）あらゆるモビリティー（移動手段）が自動運転化して交通事故が１万分の１以下になる」と語り、より安く安全・確実に届く交通や物流がもたらされると分析した。

これらのデジタルデータを活用すれば完全な需給マッチングができ、必要な時に必要な量を生産するジャストインタイムを秒単位で行える。コールセンターでは相手の問題に寄り添ったより人間らしい自動応答が可能になり、投資では数兆通りのシミュレーションから最適な戦略をＡＩが導き出せるという。医療分野では遺伝子解析による個別最適化したパーソナライズ医療・創薬が可能になり、「難しい病気で亡くなる人は激減する」（孫氏）。

ＡＧＩの料金形態については「ウィッシュ（顧客の要請）の価値に応じた単価になるだろう」（同）との見方を示した。

孫氏は自動車の運転に各種の規制があるのと同様に、ＡＧＩにも一定の規制が必要とする。一方で「だからと言って使わないのは、自動車や電気を使わないというのと等しい。使った人、国は進化する」と指摘した。

１９８９年の時価総額ランキングで世界を席巻した日本企業はインターネット革命を取り込めず、現在は「ＧＡＦＡ」と呼ばれる米巨大ＩＴ企業などが上位に入っている。孫氏は「ＡＩの時代を拒否するか、積極的に受け入れるかで決定的な差が出てくる」とし、ＡＩの積極活用に理解を求めた。